142戦目の初秘策「パリの慟哭」柔道阿部詩を倒すためだけの必殺技/取材ノート11
「パリの慟哭(どうこく)」は、今夏のオリンピック(五輪)を代表する1シーンとして、強く記憶に刻まれている方も多いのではないでしょうか。日本が海外大会では歴代最多となるメダル45個(金20銀12銅13)を獲得した一方、大会のハイライトとして語り継がれる、衝撃の敗戦でした。
柔道女子52キロ級で2連覇を狙い、まさかの2回戦敗退で号泣した阿部詩(24=パーク24)。ディヨラ・ケルディヨロワ(26=ウズベキスタン)に一本負けした背景に、何があったのか。データ分析の側面から見えてくるものがありました。
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人生初、外国人選手相手の一本負け
慟哭の慟は「身を震わせて嘆く」ことで、哭は「声を上げて泣き叫ぶ」様子を表す。7月28日、パリのシャンドマルス・アリーナに響き渡り、最上段の記者席にまで届いた悲痛な声と光景は、まさにそれだった。
男子66キロ級を制した26歳の兄一二三との、史上初の「きょうだい2連覇」の夢が打ち砕かれたのは、まだ2回戦。一二三が初戦すら迎えていない段階だった。
詩は、ケルディヨロワから、横について後方に引き倒し、背中から畳になぎ倒す捨て身技を食らった。谷落とし。20歳で東京五輪女王になった詩が、国際大会で外国人を相手に一本負けするのは、人生初だった。
なぜ負けたのか。試合直後、過呼吸の症状に陥り、憔悴(しょうすい)し切って1人で歩けない状態になっていた詩は4時間後、目を腫らして取材に応じた。
「本当に悔しいの一言。五輪という舞台で勝てなかった私が弱い。相手はすごく強くて、上回っていた」
連覇への重圧、ノーシードで迎えたことなど敗因は一概に言い切れない。本人も秋の段階で「まだ、まじまじと見返せていない」と明かしている。ただ、東京五輪から無敗でパリに到達した最強女王が、衝撃の敗戦後に絞り出した言葉を見返すと、こう話していた。
「相手の技が本当にうまくて、自分も対応し切れなく、という形で投げられてしまいました。警戒をしていて、対策もしていたんですけど、それを相手が上回ってきたという感じです」
裏付ける、興味深いデータがある。五輪後、分析の側面から見えてきたものは相手の周到な準備だった。
全日本柔道連盟の科学研究部(科研)は、世界ランキング1位のケルディヨロワを分析していた。彼女が国際大会デビューしたジュニア時代からの映像、その数142試合。全ての技、得失点、仕掛けた時間から組み手まで判別するシステムによれば、低く入る担ぎ技、寝技の腕ひしぎ十字固めが約6割を占めていた。
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長野県飯田市生まれ。早大4年時にアメリカンフットボールの甲子園ボウル出場。
2004年入社。文化社会部から東北総局へ赴任し、花巻東高の大谷翔平投手や甲子園3季連続準優勝の光星学院など取材。整理部をへて13年11月からスポーツ部。
サッカー班で仙台、鹿島、東京、浦和や16年リオデジャネイロ五輪、18年W杯ロシア大会の日本代表を担当。
20年1月から五輪班。夏は東京2020大会組織委員会とフェンシング、冬は羽生結弦選手ら北京五輪のフィギュアスケートを取材。
22年4月から悲願の柔道、アメフト担当も。
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