敗退したチームのコーチが思うこと/吉田昌一
フットボールシーズンも佳境に入り、日本一を狙えるチームが絞られてきました。社会人は、富士通フロンティアーズ、パナソニック電工インパルス、鹿島ディアーズ、アサヒビールシルバースターの4チームがファイナルステージ進出を決め、12月21日に東京ドームで行われる「JAPAN X BOWL」でNO.1が決まります。大学は、東日本では法政大学と早稲田大学が、西日本では関西大学と名城大学が、12月13日の「甲子園ボウル」の出場をかけて11月29日に戦います。この社会人と大学の勝者が、来年1月3日に東京ドームで開催される「ライスボウル」で戦って日本一のチームが決まります。高校は、関東は日大三高校、関西は立命館宇治高校が、それぞれ春に続き優勝しました。12月23日に味の素スタジアムで行われる「クリスマスボウル」で高校日本一をかけて戦います。フットボールファンにとっては最高のシーズンが訪れ、毎週毎週ワクワクする状態が続くわけですが、一方で失意のシーズンを過ごしている人もいます。それは敗退したチームのコーチたちです。
私がコーチをしている高校は、東京都大会で優勝したものの、関東大会では1回戦で敗れてシーズンを終了してしまいました。この経験は3年ぶりのことです。この2年間は関東優勝チームとしてクリスマスボウルに出場していたので、シーズンの最後まで試合をしていました。クリスマスボウルでは2年連続で敗れてしまったので、最後は結局「負け試合」で終わってしまったのですが、この2年間と今年とでは大きく違います。その原因は、「シーズン終了」の準備ができているかどうか、という点です。日本一をかけた試合は、勝っても負けても試合が終われば、シーズン終了です。しかし、トーナメント途中の敗退は予期していません。本当に「サドン・デス」という言葉がピッタリの状況です。
こうして敗退してしまったコーチは、しばらくフットボールを見るのが嫌になります。ようやく負けた試合のビデオを見られるようになると、今度は後悔するばかりです。「あの時、こうすれば良かった」、「こういった準備をしとけば良かった」といった愚痴とともにため息が出るばかりです。その頃には新チームが動き出しているのですが、なかなか気持ちを入れ替えることができません。そんな状況で練習に顔を出した時、とてもうれしいことがありました。引退した3年生が下級生を一生懸命教えていたのです。それも1人だけではなく、何人もいました。試合に負けて一番ショックを受けているのは、コーチではなく彼らのはずなのに、元気一杯で下級生のために動いています。その姿を見て、自分も気持ちを入れ替えることができました。彼らには本当に感謝しています。
こういったチームは全国に何チームもあるでしょう。たぶん、勝ち残っているチーム以外は同じような状況のはずです。敗戦から来年を目指してなんとか立ち上がろうとしているはずです。残念ながら敗退してしまったチームのコーチ陣のみなさん、来シーズン目指して頑張りましょう。
- 吉田昌一(よしだ・しょういち)
- 1986年入社、広告局勤務。 早稲田大学高等学院でフットボールを始め、早稲田大学ではDBとして関東代表に選抜される。卒業後、大学のコーチを10年間した後に高校のコーチを行っている。