「アップセット」にみるトーナメントとリーグ戦の違い
9月27日に第40回全国高校アメリカンフットボール選手権の東京都大会準々決勝が行われ、私がコーチをしている早稲田大学高等学院は勝利して東京都のベスト4に入ることができました。これで、関東大会への道が開け、秋のシーズンを継続することができました。もし、準々決勝で敗れていると、3年生は「引退」ということになって高校でのフットボールは終了してしまいます。それだけに、試合前のプレッシャーのかかり方はリーグ戦の比ではありませんでした。ということで、今回はトーナメントとリーグ戦の違い、特に「アップセット」について書きたいと思います。
社会人と大学はリーグ戦形式で、関東の高校生はトーナメント形式で大会を行っています。いずれも優勝チームを決める最終的な大会はトーナメント方式なので、シーズン終盤の戦い方は同じですが、序盤の戦い方は全く違います。リーグ戦の場合は終盤に勝負をかけるために、序盤の試合はプレーを制限したり、出場選手を調整したりするケースがあります。その結果、前評判の低かったチームがしっかりと準備して試合に臨んで勝利を得る、いわゆる「アップセット」というケースが起こります。上位チームにとっては、序盤の1敗は残り試合を全勝することで帳消しにできるので、逆にその敗戦をカンフル剤として、「日本一」を獲得したチームも多数あります。しかし、トーナメントでは「アップセット」はシーズン終了を意味します。どんな相手であっても、勝負に絶対はありえないので、どのチームもシーズン序盤から凄いプレッシャーの中で戦っています。だから「アップセット」の起こるケースは非常に少なくなっています。
さて、問題は「アップセット」が起こった後です。実力があればチームを立て直すことは可能性ですが、実力的に劣っているのに「アップセット」だと勘違いしていると大変なことになります。気持ちの入れ方や試合前の準備をしっかりすれば勝利できると思い、根本的なレベルアップを怠っていると、そのまま敗戦を続けてしまいます。今年も大学のリーグ戦で「アップセット」が起こっています。関東では早稲田大学が国士舘大学に敗れ、関西では関西学院大学が関西大学に僅差で敗れています。これが本当にアップセットなのか、そうでないのかは、今後の試合を注目してみたいと思います。勝利した国士舘大学、関西大学だけではなく、敗退した早稲田大学や関西学院大学がどのような試合をするか興味深いところです。
また、常に全力で勝負している高校フットボールは、リーグ戦とは違う面白さがあります。関東高等学校アメリカンフットボール連盟(http://www.ne.jp/asahi/high/football/)で今後の試合日程がわかるので、興味のある方は足を運んでみてください。
- 吉田昌一(よしだ・しょういち)
- 1986年入社、広告局勤務。 早稲田大学高等学院でフットボールを始め、早稲田大学ではDBとして関東代表に選抜される。卒業後、大学のコーチを10年間した後に高校のコーチを行っている。