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日本代表候補選手インタビュー

 日本No.1シューターが代表に帰ってきた。折茂武彦(36=トヨタ自動車)が4年ぶりに代表復帰。7月19~22日に開催されたキリン杯ではMVPも獲得した。代表復帰を悩んだこともあったというが、日本ために、そして愛する息子のために世界選手権での活躍を誓った。

代表ユニホーム姿を息子に見せたい

世界選手権や代表への思いを語る折茂
世界選手権や代表への思いを語る折茂

── 02年のアジア大会以来、4年ぶりの代表復帰になりますね。同年代の佐古(賢一)さんや(高橋)マイケルらが辞退し、折茂さんも代表入りを悩まれたとの噂を聞きました。

 実は僕自身も(代表復帰を)非常に悩んだし周囲の人にも相談しました。“36”という年齢で、果たして僕に代表でできる力が残っているのか? チームの迷惑にならないのか? といろいろと考えました。また代表に入っている若い選手たちからは「ジェリコ(パブリセビッチ監督)の練習は相当ハードだ」と聞かされていたので、その練習についていけるのかも不安だったんです。

── そんな折茂さんが復帰を決断されたのはなぜですか?

 ジェリコが僕を必要としてくれたということですね。シーズン中の立ち話ですが、ジェリコ本人から「今まで4年間代表を指導してきてシューターというポジションが育たなかったので、助けてほしい」と言われたんです。監督から必要とされているというのは選手冥利(みょうり)に尽きますよね。本当にうれしかったです。でも僕は4年間、ジェリコのバスケをしていない。僕が代表入りすることで、これまで若手中心できたチームが壊れてしまったらと思うと、躊躇もしました。でもジェリコからは「そんなことは気にしなくてもいい。折茂がそんなことを背負う必要はないんだよ」と言われて、一気に楽になりました。

── それ以外に後押しされたものはありますか?

 7歳(小2)になる息子(佑飛君)から「パパが日本代表で戦っているところをみたい」と言われたのも決断した理由のひとつです。前に僕が代表だった時はまだ2歳ぐらいだったので、全く代表姿を覚えていないんですよ。息子が3歳の時にスーパーリーグで優勝しているんですが、写真を見せても「記憶にない」って言う。僕にとって「息子の記憶に残るまでバスケットをしていたい」というのを大きな目標としてプレーしてきたんです。今年、スーパーリーグでの優勝を見せることができましたが、日本代表のユニホーム姿も記憶に残して欲しいと思いました。佐古たちとも一緒にやりたかったんですが、彼もケガ(05年3月にアキレス腱断裂)などがあってコンディションが整わなかったみたいで、彼なりの理由で辞退したんだと思います。

ナショナルチームの大切さを実感

フィジカルトレーニングの合間に川村(右)に話しかける折茂
フィジカルトレーニングの合間に川村(右)に話しかける折茂

── 折茂さんにとって日本代表とは何ですか?

 一言で言えば、最高の場所ですね。うーん、自分が居たい場所というか、現役である以上は、そこでプレーをするのがひとつの目標ですから最高地点だと思いますね。初めてナショナルチームに入ったときは、入りたくて仕方なかったので、本当にうれしかったですね。でもナショナルチームにずっと入っていると、入るのが当たり前という感覚にとらわれてしまった時期もありました。さらに年齢を重ねると重荷にもなった。ナショナルチームに入っても対価があるわけではない。でもチーム(トヨタ自動車)でそれなりのプレーをすれば対価がある。比較してはいけないんでしょうけどね。両方の掛け持ちは難しいと思って(代表を辞退して)チームを取ってしまった時もありましたね。でも今考えると、それは最悪のことで、日本代表にはお金には代えられない名誉や、自分自身を高められるものがあるんです。

── 再び代表に選ばれて、そういった気持ちはより強くなりましたか?

 この年でまさか呼んでもらえると思ってもいなかったし、今までのナショナルチームを見てきても“36”という年齢で代表入りは珍しい。選んでくれたジェリコには感謝しています。また僕を受け入れてくれたチームメートにも感謝しています。家族をはじめいろんな形でサポートしてくれている人たちにも感謝しています。ナショナルチームの大切さ、重さをこの年になってわかった気がします。 

── 今回は最年長という立場ですが、代表内での役割についてはどうお考えですか?

 そうですね。チームがスムーズに試合に臨めることを重点において、試合前の心構えなどをみんなに話しています。誰かが困っていれば、僕のこれまでの経験を活かして問題解決ができると思っていますし、どちらかといえば引っ張るというよりも、後ろから支える感じですね。若い選手や、話したことない選手からは「折茂さんは怖そう」というイメージもあったようですが、実は僕はおちゃらけキャラなんです。だから若い選手にも溶け込めていると思いますよ。僕自身も自分から若手の部屋に行ったり、合宿中のリラックスタイムには、ゲームの輪にも積極的に入るようにしています。僕自身も違和感はないし、若い選手も違和感なく受け入れてくれていると思いますよ。若手との接し方もこちらから言うだけでなく、何かあればいってもらうようにしています。今の若い人はしっかりしてますよ。悪い言い方すれば生意気ってことですけどね(笑い)。

日本のバスケットは成長している

ランニングパスをする折茂
ランニングパスをする折茂

── 折茂さんは98年の世界選手権に出場されていますね。

 98年の時は1勝はした(13-16位決定予備戦でセネガルに60-55で勝利)のですが、なんとなく終わってしまった感じです。場面場面が思い浮かばず、なぜか印象がないんです。世界選手権に出場するためのアジアの予選は充実して、印象があって「世界選手権の出場権を自力で取った」という充実感がありました。でもいざ本番になった時には、圧倒されて、何がなんだかわからないうちに終わった。これが世界のレベルだというのを思い知らされました。

── 8年前から日本のバスケットは成長していると感じますか?

 確実に成長していますね。特にディフェンスに関しては間違いなく成長しているでしょうね。98年(前回出場の世界選手権)のときは個性あふれる選手がそろっていて、オフェンスにもかなり自信を持っている選手もいっぱいいた。おごりがあったわけではないのでしょうが、当時の韓国や中国とも対等に戦って、世界選手権の出場権を取ったことでオフェンスにも自信を持っていました。でもそれでは世界には通用しなかったんです。やっぱりディフェンスをきっちりやらないと日本のバスケは勝てないことを認識しました。あの時に今、やっているディフェンスをやっていたらどうだったんだろうなーと考えますね。

── ジェリコのバスケが守備を重視したバスケットだということですね?

 はい。まずはディフェンスがメーンですね。ルーズボールに関しても死ぬ気で追うようにいわれます。転がっているボールを気を抜いて追うとすごく怒られますよ。飛び込むような勢いで行かないといけないとね。一生懸命やらない人間は必要ないということです。それと欧州での試合(6月の遠征で中国、イタリアなどと戦い1勝6敗)ではターンオーバーされることが多かったので、それを半減させることが課題ですね。世界と戦うためには。ミスがあったら強豪にはぜったいに勝てないですからね。

── 気持ちや意識の持ち方についてはどうお考えですか?

 昔に比べれば竹内兄弟を含めて大きな選手が増えたが、やることは変わらない思います。まず一生懸命さが必要です。僕らは弱いんですから。弱いのに一生懸命やらないとどうしようもない。死にもの狂いでやって、ミスを少なくし、速い展開にもっていくというのは変わらないと思います。

── 世界選手権ではどういう試合をする必要がありますか? また予選リーグで勝たねばならない試合はどの試合ですか?

 とにかく失点を抑えることです。具体的には60点台、悪くても75点以内に抑えることが勝利への条件だと思います。80点、90点取られるようだと、その試合は負けですね。勝負に出る試合はアンゴラ、パナマ、ニュージーランドの3試合でしょう。ドイツにはノビツキー、スペインにはフォワードのガソルをはじめ、ガードにもいい選手がいて世界でもトップクラスでしょう。もちろん勝負を捨てているわけではないですが、格では負けていると思います。そういう意味でも、先ほど挙げた3国(アンゴラ、パナマ、ニュージーランド)には負けられないですね。

自分の役割を全うしたい

リラックスした表情でシュート練習をする折茂
リラックスした表情でシュート練習をする折茂

── 6月の欧州での合宿は非常にきついものだったとうかがいました。

 行った当初はフィジカル練習が主体でサーキットトレーニングやランニングは今まで経験したことのないハードなメニューでした。予想以上のハードさで初日を終えたときに、「駄目かもしれない」と思いました。でも来たからには「これで壊れても(故障しても)仕方がないな。壊れたらこれが限界なんだ」と割り切りました。そして体がだめでも、気持ちだけは負けないようにしようと決意しました。具体的には休む時間なく、跳んだり走ったりを繰り返すのですが、まさにバスケットには必要な筋肉を鍛えるものでしたね。特に「日本人はパスが弱い」と言われるのですが、その強化に関しては1本の線でつながっているトレーニングでしたね。でもこれが理にかなっている。「何でこんなのやらなきゃいけないんだよ」というような無駄なトレーニングはなかったですね。きつさ的には大学、社会人でもなかったもの。でもこの年齢だからかなー(笑い)?10歳若かったらきつくないのかも?

── (若手の)五十嵐さんたちもきつかったと言ってましたよ。

 ですよね? でも(五十嵐)圭が、36歳になった時にこのトレーニングができるかといったら、どうなんでしょう。僕はできましたからね(笑い)。自信にはなりましたよ。

── 自国開催の大会で、ファンの期待も大きいでしょうし、ジェリコの期待がかかってますね?

 今回は自国での開催で、自力で出たわけではないんです。客観的に見ても日本の力は出場国の中でも下の方でしょう。力の差あるとは思いますが、チームワークとディフェンスで勝負すべきだと思います。個人的にもディフェンスには力を入れています。オフェンスで対抗しようとするとバスケットでは力の差は歴然としてきます。12人のメンバー1人1人が役割を果たすことが必要です。僕は最年長ですから誰一人違う方向を向くことなく、もし外れそうになった人間がいたら、選手の立場で、方向を修正していきたいと思っています。僕はシューターとして選ばれたし、ファンの方はシュートに期待してくれていると思いますが、それだけじゃない何かを見せたいので、チームの一員として役割を全うしたいですね。僕のシュートやパフォーマンスよりも大切なものはいっぱいあるので、そんな中で自分のよさを少しでも見せられればいいです。

── 息子さんは予選リーグから観戦されるんですか?

 都合でドイツ戦はこれないみたいですが、それ以降の試合は全部見に来ます。いい発奮材料になりますね。



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