心はすでにプロだった。楽天の育成を含む新人8選手が6日、仙台市の泉犬鷲寮に入った。ドラフト1位のオコエ瑠偉外野手(18=関東第一)は「これからはプロ野球選手なので」と、制服ではなくあえて私服で登場した。さらに睡眠の重要性から、約30万円の特注マットレスも持参した。万全の体調管理と高いプロ意識で、意気揚々と第1歩を踏み出した。

 高校の制服は東京・東村山の実家に置いてきた。黒のセーターにグレーのダウンジャケットを羽織り、首には同系色のマフラー。がっちりした腰回りをEDWINの38インチのジーンズで包み、オコエは泉犬鷲寮の門を力強くたたいた。「プロ野球の入寮の日なので制服は着ませんでした。ドラフトで選んでいただいた瞬間から自分はずっと、プロとして頑張りたいと決めてきましたから」。同期唯一の私服入寮には骨太な理由があった。

 コーディネートには工夫を凝らした。「目立ちすぎず、明るすぎず」と、黒とグレーでシックにまとめた。マフラーは「先月、高校の寮の食堂に勤めるおばあちゃんの息子さんからもらいました。サインを渡したお礼だそうです」と、さっそく取り入れた。普段からアメリカンイーグルなどの海外ブランドを好み、米の人気歌手クリス・ブラウンらの着こなしを参考にする。だが、ジーンズだけは「腰回りと太ももがパンパンなのでサイズがないんです…」と、思い通りにならない悩みを打ち明けた。

 外見以上に、体のメンテナンスにこだわっていく。到着後はジャージーに着替え、ヤンキース田中らも愛用する特注マットレスに寝ころんだ。「3秒で眠れます。爆買いならぬ爆睡。マットはデータを取って、自分にあった硬さにしていただいた」。高校時代から睡眠の質と量を大切にし、小鳥のさえずりなど入眠を促す音楽も試してきた。「高校時代に腰を痛めたこともあって、体のケアは大事にしています」。この部屋で疲労をいやしながら、11日から始まる新人合同自主トレに臨む。

 かつて嶋が過ごした12号室から大きく羽ばたく。「嶋さんが積み上げてきた成績を超せるようにしたい」と引き締めた。元旦は浅草の浅草寺に出かけ、開幕1軍を祈願した。心と体の準備は万全。注目ルーキーの16年が華々しく幕を開けた。【松本岳志】