恐れ入りました! 阪神岩貞祐太投手(24)が、プロ初登板の巨人戦で自身初完投を完封で飾った。初回に相手失策でもらった1点を死守。3安打に抑えて0を9個並べ、今季負けなしだった巨人菅野の不敗神話も止めた。伝統の一戦に完封デビューは球団3人目だが、1-0では初。チームの連敗を止め、3位に浮上させた左腕に、金本監督も最敬礼で感謝した。

 岩貞は思わず両手を突き上げた。初体験の9回。代打相川を直球で左飛に打ち取ると、体の内側から感情があふれ出た。「鳥肌が立ちました」。捕手原口と肩を組み、ベンチで待っていた香田投手コーチとは喜びのハグ。プロ初完投を完封勝ち。しかも巨人戦初登板の快挙だった。

 岩貞 9回っていうのを考えないでおこうと思ったけど、ボールに(変な意識が)表れていた。アウトになって良かった。

 宿敵のエースに投げ勝った。菅野はここまで今季登板9試合負けなし、防御率セ界NO・1。だが、初回に1点の援護をもらったことで「この1点を守り抜けば勝てると自分に言い聞かせて投げた。最後まで投げ切るつもりでいきました」。マウンドに立ち続けたのは防御率リーグ2位左腕。自己最多126球の力投が報われた。

 熊本の実家では毎日のように巨人戦の野球中継が流れていた。YGマークをつけた選手の中でも高橋監督だけは特別だった。グラブもバットも高橋モデル。部屋にはサインボールを飾るほどのファンだった。「憧れだったんで…」。敵将となった“スター”との対戦は、やはり格別の思いがあった。「初回ちょっと緊張してしまったんですが、その後は守備にも助けられた」。

 苦しいブルペン事情を救った。藤川、マテオとヤクルト戦は2夜続けて救援失敗によるサヨナラ負け。先発陣も苦しんでいた。そんな状況で岩貞がチーム今季初完封。金本監督も孝行息子に目を細めた。

 金本監督 素晴らしい投球。参りました。球数的にはギリギリだったけど、岩貞と心中ですよ。今日は岩貞の試合。ありがとうとか、おめでとうとか。いっぱいありすぎて(言葉)見つからない。

 13年のドラフト1位入団。昨季までの2年間で通算2勝だったが、メッセンジャーと並ぶチームトップの4勝目だ。防御率0・88、70奪三振は、ともに菅野に次いでリーグ2位だ。「また反省を生かして次のピッチングにつなげていきたい」。若手野手ばかりが目立っていた金本阪神。投手部門でも、新しい芽が確実に出てきている。【桝井聡】

 ▼3年目の岩貞がプロ入り初の完封勝ち。岩貞はプロ通算20試合目だが、巨人戦は初登板。2リーグ制後、巨人戦初登板で完封勝ちは14年則本(楽天)以来10人目。阪神では87年キーオ、94年藪に次いで3人目になる。阪神の得点は初回の1点だけ。阪神投手で初回の1点を守って勝ったスミ1完封勝ちは、00年4月23日星野伸がヤクルト戦で記録して以来、16年ぶり。巨人戦でスミ1完封勝ちの阪神投手は68年4月20日江夏以来、48年ぶりだ。