楽天ドラフト3位の田中和基外野手(22=立大)が、土壇場でプロ初盗塁を決めた。

 1点を追う9回1死一塁、代走で登場した。「『状況に関係なく、ランナーが出たらいく』と言ってもらっていた」。ベンチでロッテ先発涌井の挙動を洞察して、タイミングを計っていた。

 初球。連敗ストップの見えた涌井はバッターに集中していた。セットポジションの技術が極めて高いが、ボールを長く保持し、得意のけん制を挟まず投球に入った。「『セーフになる』と思って、思い切って行った」。50メートル5秒8のスピードがある。が、この局面で、百戦錬磨を相手に、動いた瞬間にセーフと分かるスタートを切ったことに価値があった。

 三塁に進むと再び高いセンスを発揮した。藤田の一ゴロに迷いなく本塁突入。クロスプレーになった。「タイミングは『危ないかな』と思ったが、一塁ゴロだったので」と冷静だった。体を先に通過させ、最後に手を伸ばして同点のホームに触れ、延長戦に持ち込んだ。

 延長10回2死一、二塁で打席が回ってきた。ロッテ内の初球、外角149キロを空振りした。本人は「初球を打てなかったことがすべて。技術の差を感じた。仕留めなければいけない」としたが、梨田監督をして「トリプルスリーを狙える」好素材の魅力が、当たれば確実に長打…のファーストスイングにも詰まっていた。嶋は「初球からスタートを切れないし、あんなに振れない」。藤田も「すごいスピード。『やってくれる』と思っていたんです」。経験豊富な同僚を驚かせる“デビュー”になった。

 梨田監督は、会見の大半を田中に割いた。「負けてしまったけど、粘りのあるゲームができた。田中の足。一発でなかなかスタートを切れない。いい仕事。グリーンライトで初球から…。合わせて、行けないものだけど。本塁へはゴロゴー。かわしながら手を出す。オープン戦を見ていても『使える』という感じがあった」。ルーキーが立て続けに躍動する楽天に、また楽しみな選手が加わった。