<ロッテ3-6阪神>◇8日◇QVCマリン

 どん底といえるチームの雰囲気を一打で変えた。試合開始から1分。2ボールからの3球目。阪神の1番マット・マートン外野手(29)が右手を離し、大きなフォロースルーを決めた。ロッテ吉見の真ん中スライダーにやや泳ぎながら、左翼ポール際中段に運ぶ。4月12日の開幕試合広島戦以来、今季2度目の先頭打者弾に「早い回に点を取ってプレッシャーをかけられたのは良かったね」と満足そうだ。

 自らも乗った。2点リードの2回1死一、二塁からは右前打で好機を広げ、この回4得点をお膳立て。4回は右前打。6回は右翼線二塁打を放ち、今季初の4安打。球団助っ人ではソロムコと並ぶ最多タイの通算先頭打者4本塁打を記録した男はやはり、チームのキーマンだった。

 5回が終わればベンチ裏にこもる。5月下旬の甲子園、紫の箱をベンチに持ち込んだ。中身はプロテイン飲料。「毎日、5回終了時の休憩中に飲み干すんだ」。自宅、クラブハウスではもちろん、強靱(きょうじん)な肉体作りは試合中にまで及ぶ。

 「ベスト体重は102、103キロ。これをキープしたいんだ。今は102・7キロぐらいかな」と、体重計で毎日チェックする。昨季は開幕時に105キロあった体重がシーズン終了時、98キロまで落ち込んた。終盤、パワー不足に陥った反省を糧に、高レベルで1年間を戦い抜く算段だ。

 「チーム状態は良くないけど、良い形でシーズンを終えたい。力強く戦うので、声援よろしくお願いします」。ヒーローインタビューでの言葉にウソはない。【佐井陽介】