<広島4-1中日>◇24日◇マツダスタジアム

 広島の前田智徳外野手(40)がひと振りで決めた。同点の8回1死一、二塁。本拠地マツダスタジアムに「代打前田智」を告げるアナウンスが流れると、球場はヒートアップ。大歓声を背に、赤ヘルの背番号1が左打席に構えた。

 1ボール1ストライクからの3球目、中日平井の146キロ外角を右中間にはじき返した。勝ち越しの2点二塁打は、昨年8月21日の横浜戦以来、307日ぶりの決勝打となった。1万5726人の視線を浴びたお立ち台で、寡黙な男が冗舌に声を張り上げた。

 前田智

 久しぶりで緊張しています。ファンの方は期待していなかったと思いますが、期待しない方がたまには打つので…。あまり期待しないで下さい。

 交流戦では5打席連続三振を味わい、チームは最下位に沈んだ。試合前まで19試合に代打で出場して2安打。安打は5月20日オリックス戦以来出ていなかった。「役に立たないのならベンチにいても邪魔になる。何とかしたい気持ちだった」と振り返った。

 プロ22年目。14日には40歳になった。「自分が打っていれば勝てた試合が3試合はあった。取り返したいと思ってやってきた」と言う。久々に存在感を示す一打に野村監督は「切り札というか、ああいうところで使うのは前田と決めている」と目を細めた。チームは5月21~24日の3連勝以来の連勝。役者が出そろい、広島が逆襲態勢に入った。【佐藤貴洋】