<広島2-0中日>◇26日◇マツダスタジアム

 剛腕サウスポーが上々デビュー!

 広島が中日との接戦を制し、リーグ戦再開直後のカードを勝ち越した。ドラフト2位ルーキーの中村恭平投手(22=富士大)がプロ初登板初先発を果たし、5回1/3を無失点に抑える好投を披露。プロ初勝利こそお預けになったが、最速153キロ左腕が先発ローテーション入り一発回答で決めた。

 激走して一塁ベースを駆け抜けると、背後から怒声が響き渡る。3回、三塁へのボテボテのゴロで中村恭は全力疾走したがアウトの判定。振り向くと、そこには佐藤一塁塁審に抗議する野村謙二郎監督(44)の姿があった。新人左腕が、勝負の世界で命を燃やすプロの生きざまに触れた瞬間だった。記念すべき初マウンドは、無我夢中で左腕を振るった。

 中村恭

 すごく緊張しました。めっちゃ、調子が悪くて…。(1回、先頭荒木に)四球を出して『今日、ヤバイ』と。倉さんが(二盗を)刺してくれて楽になった。2回くらいからある程度、周りが見えました。

 2回、和田には間合いを外すスライダーで二飛に料理。平田には球持ちのいい速球を内角に投げ込み、空を切らせた。球威が落ちた6回1死二、三塁の場面で今村猛投手(20)に継投したが、この日は変化球の制球がさえ、無失点。140キロ前後の速球でも中日打線を詰まらせ、先発陣定着への強烈なアピールに成功した。

 大野投手チーフコーチ

 点を与えていないのは評価したい。今日の投球で、もう1回(先発で)投げる可能性はあるよ。

 野球への道筋を照らしてくれたのは両親だ。小学校の頃、習字の授業で左利きだった中村少年が右手で書くよう勧められたことがあった。父浩朗(ひろあき)さん(48)は先生に言う。「左のままでもいいですか?」。徹底的にレフティーの感覚にこだわった。浩朗さんは「楽しく野球をしていましたからね。変える必要もないかなと思って」と振り返る。剛腕左腕のルーツは、親の愛情だった。

 上々の第1歩を踏み出したが満足感はない。自慢の直球は平均140キロ前後にとどまり、苦笑いで言う。

 中村恭

 三振を取ったときの歓声は気持ちよかったですけどね。腕を振れないというより、萎縮したのかな。もう少し、真っすぐで勝負したかったですね。

 初陣で確かな手応えを得た。自信を胸に秘め、次に狙うのは、もちろん、プロ初星だ。【酒井俊作】