<日本ハム7-1楽天>◇9日◇旭川

 頼れるベテランの一振りが、試合を決めた。日本ハム二岡智宏内野手(35)が、楽天6回戦(旭川)の5回1死満塁の好機に代打で登場し、バックスクリーン左に満塁本塁打を放った。プロ13年目で初めての代打本塁打がグランドスラム。日本ハムでは、07年4月の田中幸雄(現打撃コーチ)以来の代打満塁本塁打だった。打線も14安打7得点で、今季なかなか援護することができなかった武田勝投手(33)を大量援護し、快勝した。

 高ぶりすぎた感情を自覚し、打席の中ですーっと落ち着けた。5回1死満塁。ホフパワーの代打でバットを握った二岡は、楽天川岸の初球131キロスライダーを、バックネット方向にファウルした。

 「何とかしなきゃっていう気持ちが強く出て、少し振りすぎた。それが途中から出る難しさ」。1打席で結果を求められる代打という役回りは、経験豊富なベテランでも難しい。カウント2ボール2ストライクから、初球と同じような軌道で投じられたスライダーをバックスクリーン左の芝生席へ運んだ。

 プロ13年目で初めての代打本塁打がグランドスラム。最近の満塁男といえば中田だが、実は二岡こそ“日本記録保持者”だ。自身6本目の満塁弾は、2打席連続満塁本塁打というプロ野球史上初めての快挙だった、06年4月以来だった。「それは、まぁ、マスコミの方があおればいいんで」。

 右足に痛みを抱えながらの出場。先月29日には、右大腿(だいたい)二頭筋の筋挫傷と診断された。「足の状態もあるので、走らずにすんでよかったです」。万全ではない体で、チームのために献身している。

 チームは3試合ぶりの2ケタ安打で、今季「見殺し」にすることが続いていた武田勝を大量援護した。試合開始直前。ベンチで組まれた円陣では、清水外野守備走塁コーチが「勝には借りがいっぱいあるので、打って返そう」と奮起を促した。中軸の糸井、中田、稲葉でつくった好機に、試合を決めた二岡の一振り。野手陣の心が結集し、勝利のために1つになった結果が、旭川の曇天に美しい放物線を描いた。【本間翼】