<ヤクルト1-4阪神>◇12日◇神宮

 熱闘神宮球場!

 ウン年前に高校球児だったトラの右腕2人が熱い投球で首位ヤクルトをねじ伏せた。久保康友投手(31)は7回1失点で、江夏、小林繁に並ぶヤクルト戦8連勝。剛腕高校生にライバル心を燃やしてのストレート勝負だ。藤川球児投手(31)は驚がくの140キロフォークで3者連続三振締め。連続Kは6まで伸びたが、こちらは「歳内くんに負けている」だって。どちらもお若い!

 虎史上最強のツバメキラーが誕生した。7回に1点を失っても、久保に焦りはなかった。2死一、二塁と走者を背負ったが、川島慶を外角低めいっぱいの直球で二ゴロに打ち取った。あとは小林宏、球児につなぐ“トリプルK”リレー。09年9月29日から、あしかけ3年。江夏豊、小林繁に並ぶ、ヤクルト戦8連勝を達成した。

 「新井さんが打った試合で負けるわけにいかないでしょ。あれで、球場の雰囲気が変わりましたから。僕が投げても、球場の雰囲気は変わりませんから」

 謙遜するセリフとは裏腹に7回1失点。安定した投球で5勝目を挙げた。

 左脇腹痛からの復帰星もヤクルト戦。5日、京セラドーム大阪で8回3安打無失点の快投だった。だが、試合中にヤクルトの怖さも再確認していた。7回、無死一塁で打者は宮本。初球、藤井彰のサインは反応を見るために変化球だった。機動力を警戒した久保はボールを投げる瞬間に、とっさの行動に出た。

 「バットを引いてきたので、ボール球を投げました。でも、クソボールなのに、当ててきた。普通は、反応できないです」

 結果は三直で併殺だったが、結果が違えば-。勝負を分けるワンプレーに警戒を強めていた。

 投げる哲学者。頭脳派右腕は、実は、野性味あふれる高校生に闘争心をかき立てられていた。復帰後は「強い直球」を強く意識している。スピードは140キロ前後ながら、4番畠山には3打席すべて勝負球に用いた。無安打に抑えるほど威力は十分。「質は良くなっている」と手応えを感じているが、この冷静な右腕は珍しく「見た目」を気にしている。

 「僕は腕を振って、一生懸命投げても140キロ。高校生が150キロ出しているのに、プロがこれでいいのかと思う」

 関大一高ではセンバツ準優勝。輝かしい実績を持ち、プロでも活躍していながら10代の若者に“嫉妬心”を燃やすところが、どこまでも進化する源のようだ。

 「今はチームが勝つことが一番。道だけは踏み外さないように」

 キラーはキラーらしく、嫌というほど首位をたたく。【鎌田真一郎】