<日本ハム1-2楽天>◇25日◇札幌ドーム

 勝負に勝って、試合に負けた。日本ハムのダルビッシュ有投手(25)が楽天から自己最多タイの15三振を奪いながら、タイムリーゼロで負けた。5月10日の楽天戦でも15三振を奪っており、シーズン2度の15奪三振以上は史上2人目の快挙。ダルビッシュにしては珍しいワインドアップ投法で、国内自己最速タイの156キロもマークするなど、負けてなお、すごさをみせつけた。

 野球の妙味に、翻弄(ほんろう)された。打者との1対1の勝負に勝っても、4敗目がつく。プロ入り自己最多タイの15三振を奪い、9回完投。報われなくても、ダルビッシュはけなげに現実を受け止めた。「大事なところで三振が取れていれば違う結果になったと思いますし、勝ちたい試合をものにできずに残念」と自分を責めた。

 遊び心満載に、力勝負を展開した。通常はセットポジションだが、この日は投法をモデルチェンジ。両腕を大きく振りかぶるワインドアップを選択した。初球から国内自己最速タイ156キロをマーク。理由は「何となく」だそうだが、自身のツイッターで熱烈なオールド野球ファンが、その姿を見たいとリクエストしたことに応えたという。06年終盤に一時、試験的に行ったが、公式戦では封印していた。

 今季4度目の中5日での登板だった。ソフトバンク追撃のため首脳陣へ「コンディション的に問題ない。中5日でいきたい」と申し出ていた。しかし、前回登板の19日オリックス戦(9回2失点も勝ち負け付かず)と同じように、援護に見放された。梨田監督は「全員の責任。反省すべきところは反省しないといけない」と頭を下げた。

 08年に並ぶ自身シーズン最多タイ16個目の白星は逃したが「投球自体は良かったので、次の登板が楽しみです」と収穫をつかんだ。この日はヤンキースとレンジャーズの視察常連組のほかに、札幌に今季初見参のブルージェイズはトニー・ラカバGM補佐を派遣。本場の視線も過熱してきた。自在な未知なる魅力を見せつけ、負けてなお、存在価値を高めた。【高山通史】