<広島1-2巨人>◇27日◇マツダスタジアム

 マエケンが全開モード!!

 広島が巨人との接戦を落とし、後半戦に入って3度目の勝率5割への挑戦に失敗した。そんな状況で奮闘したのは先発前田健太投手(23)だ。自己最速タイの152キロをマークするなど、7回1失点の好投。惜しくも1年ぶりの巨人戦白星を逃したが、本来の球威を見せつけ、勝負の終盤戦に向けて弾みをつけた。

 深々と白いタオルをかぶり、険しい表情でフィールドを見つめた。前田健の力投は報われなかった。1点リードの7回1死三塁。阿部を2球で追い込み、攻めに攻める。ボール、ファウル、ボール、ボール…。150キロを連発し、さらにファウルを打たせる。8球目だった。チェンジアップを軽打されると、無情にも左前へ。耐え抜けなかった。しのげなかった。エースは自責の念にかられた。

 「(7回は)先頭打者への四球が良くない。大事な回と思って入ったけど、ちょっと慎重になりすぎた。もっと大胆に投げれば良かった。あの回を抑えたら勝てた試合。申し訳ない」

 打線は1回に1点を先制したが、その後、巨人東野を打ち崩せない。前田健も意地を見せ、マウンドで仁王立ちした。ゆったりと左足を上げ、鋭く右腕を振り切る。2回には自己最速タイの152キロも計測。容赦なく直球主体で攻めて、4回2死後、長野に遊撃内野安打を許すまで、無安打投球だった。この日は10球、150キロ台をマークするなど、沢村賞に輝いた昨年のような球威たっぷりのストレートがよみがえった。結局勝敗はつかず、7回1失点で降板。惜敗した野村監督も力投をたたえた。

 「十分に先発の役割を果たしてくれた。我々の中では復調した印象だけど勝ち星がついたら、もっともっと乗っていけるのに。援護できなかったのは残念だ」

 この日が今季100試合目だった。後半戦に入って3度目の勝率5割復帰を狙ったが、またも失敗。チームの連勝も3で止まった。8月の月間勝ち越しもお預け。前田健にとっても昨年8月6日(東京ドーム)以来の巨人戦勝利を逃した。

 一進一退の日々だが、チームの総合力は確実に上がっている。昨季100試合を消化した時点で借金は20だった。シーズンの佳境に差し掛かり、大勝負に向けてエースの完全復調は心強い限りだ。前田健も言う。

 「真っすぐが久しぶりにいい感じだった。自分の状態が良くなってきて、前半戦と同じ相手でも違う投球をできた」

 悔しい1敗を胸に秘め、前を向いて逆襲のファイティングポーズを取る。【酒井俊作】