<ヤクルト4-2阪神>◇11日◇神宮

 阪神は悪夢の神宮3連敗で、8月5日以来の7ゲーム差に離された。新井、鳥谷のタイムリーで同点に追いついたのもつかの間、8回裏に榎田大樹投手(25)が畠山に決勝2ランをたたき込まれた。プロ47試合、207人目の打者に浴びた初被弾を責めるのは酷だが…。最短で14日に自力優勝が消滅。がけっぷちのトラ、もう1度、ほえ返せ!

 大勢の報道陣が待ち構える。榎田は覚悟を決めたようにギュッと唇を結び、顔を上げて三塁ベンチを飛び出した。バスまでの長い帰り道。「また頑張れよ!」「成長の糧にしてくれ!」。温かい声援が胸に染みる。ルーキーにはあまりに非情な結末。それでも決して逃げなかった。

 榎田

 四球がすべて。3人で切ろうと思ったんですが、あの四球が…。

 同点に追いついた直後の8回裏にマウンドへ。1番青木、2番田中を仕留め、簡単に2アウトを奪ったが3番川端をフルカウントから歩かせた。2死一塁で4番畠山。2ボール2ストライクからの6球目。榎田-小宮山の若いバッテリーは高めのボール球を選択した。しかし、143キロ直球は吸い込まれるように真ん中へ。弾丸ライナーが左翼席最前列に突き刺さる。ウソやろ?

 虎党の誰もが目を疑った。

 榎田

 高めに外そうと思ったのが中に入ってしまった。疲れはないし、調子は良かったぐらい。繊細さとコントロールをもっと意識しないといけなかった。

 勝ち越しの2ランを献上した瞬間、榎田の表情は固まった。本人も驚いたのかもしれない。1年目の今季47試合目、打者207人目で初めての被弾だったのだから。1回2失点で3敗目。「ホームランは打たれる時は打たれるモノですから」。ここまでフル回転でチームを救ってきた。誰も責めるわけがないのに、1人、敗戦の責任を背負った。そして、力を込めた。

 榎田

 次はしっかり3人で抑えたい。

 首位チームに3連敗を喫した。3戦で計7失策。自滅、自滅から最後は頼みのセットアッパーまで打ち砕かれた。3戦目はたった3安打しか許さず負けた。ヤクルトとのゲーム差は7に開き、3位巨人にも1・5ゲーム差をつけられた。逆転Vへ、間違いなく崖っぷちに立たされた。苦しい。厳しい。それでも、だ。虎戦士、指揮官は可能性がある限り、絶対に諦めない。

 真弓監督

 ずっと最後まで優勝を諦めない、と、はじめから言っているので。別に数字がどうこうは関係ない。(直接対決も)まだまだあるしね、全然。

 直接対決は8試合。崖っぷちでも、決して望みは消えない。【佐井陽介】