“火”消しは左腕にお任せ!

 中日チェン・ウェイン投手(26)が今日13日から始まる阪神3連戦の初戦に先発する。ローテーション再編の影響などもあり中12日の登板となるが、お構いなし。チームは今季、3勝14敗と火曜日に大きく負け越している。背番号21がジンクスを断ち切り、ライバル阪神を蹴落とす。

 チェンの顔から笑顔が消えた。ナゴヤドームで行われた約2時間の練習。アップ中は白い歯を見せていたが、表情が一変した。キャッチボールやダッシュメニューをしている顔は真剣そのもの。遠征先にはいつも投手陣で連れ立って向かうが、この日は1人で出発。ピリピリムードだった。

 「とりあえず自分の仕事をしっかりしたい。自分のことをしっかりしないとチームに迷惑が掛かる」

 大事な任務を担っている。中日にとってカード初戦となることが多い火曜日は今季3勝14敗。悩みの種だった。シーズン後半戦はネルソンが登板することが多かったが現在、7月12日ヤクルト戦(神宮)から9連敗中。チームが大型連勝を作り出せない一つの要因でもあった。

 ネルソンは11日の日曜日、横浜戦に中4日で登板。連敗を止めるとともに、先発ローテーションが大きく再編された。チェンにとっては8月31日阪神戦(ナゴヤドーム)から登板が遠ざかることになったが、それもチームのため。魔の火曜日に終止符を打つ。それが左腕に与えられた使命なのだ。

 “火”消し役としてはこれ以上ないキャスティングだ。今季は阪神戦4試合に登板して3勝1敗、防御率2・39と相性が良い。ただ唯一の黒星を喫したのが、敵地甲子園。7月27日に上本から満塁弾を浴びるなど自己ワーストの9失点した。相手は勝率5割ラインで上位進出を争うライバル。簡単な任務でないことは本人が一番分かっている。

 「投げてみないと分からないけど、(登板間隔が空く)影響はないと思う。とにかく自分のことをしっかりとやりたい」

 慎重に言葉を選んだ。表情には緊迫感すら漂った。シーズンはあと33試合。球史に残るだんごレースで、一歩でも足を踏み外せば命取りになりかねないギリギリの戦いだ。負の連鎖はここで断ち切る。今季初の5連勝へ、チェンがファイアマンになる。【桝井聡】