<巨人3-6阪神>◇10日◇東京ドーム

 出た、かえした、飛んだ飛んだ!

 回ってないけど平野恵一内野手(32)の夢想花が終盤のゲームを動かした。6回にチーム初安打と初得点。7回には2点適時打、その裏2つの美技と、マルチな大活躍だ。マートンは止まらない29戦連続安打に、1イニング3犠打、計5犠打とやるべきことをやった結果、おもろいように点が入りました。

 デキるパパが百点満点の仕事だ。鳥だ新井だ、いや平野だ!

 チャンスをつくり、走者をかえし、失点の芽までつみ取ってしまうスーパーマン。娘の誕生日にマルチな仕事をこなした平野も立派なヒーローだった。

 6回だ。円陣を組んで逆襲を誓ったナインの気持ちを代表するように、平野は燃えていた。

 「前の打者の能見がセーフティーバントをした姿を見て、気持ちが熱くなった。絶対、塁に出てやろうと思った」

 1死から中前打。5回まで巨人西村にノーヒットに封じられていたが、切り込み隊長の安打で打者陣が目覚めた。鳥谷、新井の適時打で一気の逆転だ。

 7回の仕事もデカかった。相手のミスでつかんだ1死二、三塁で左前にしぶとく落とし、2点を追加。4-1と点差を広げた。

 「最近、1番打者らしい仕事ができていなかった。今日はできたと思います」。満足そうに振り返った。

 真弓監督がほめたのは守備の貢献度だ。自らの適時打で押せ押せムードになっていた7回。1死一塁で、亀井の一、二塁間への打球を横っ跳びでしとめた。さらに2死二塁で坂本の右翼前に抜けようかというライナーをジャンプ捕球。流れを引き寄せるプレーに指揮官は「とにかく平野がよく拾ってくれた。こういうところでもつれたゲームを拾っていける」と勝因の1つに挙げるほどだ。

 長女の6歳の誕生日にファインプレーを連発してみせるあたりが仕事人らしい。

 「『パパしっかりしなさい』ということかな。僕らしいプレゼントというかね」

 照れながら明かしたが、少し緩んだお父さんの顔はここまで。逆転CSの可能性が膨らんできたことを問われると「そういうことより、1試合1試合を必死にやるだけ」。もっと大きなプレゼントをあげるまで、振り向かずに突っ走り、飛ぶだけだ。【柏原誠】