中日和田一浩外野手(39)が巻き返しを期す来季に向け、引退覚悟の強い思いを口にした。10日、自身が所有する岐阜県郡上市の森にファン約50人を招き「ベンちゃんの森」と題するイベントを開催。子どもたちと宝探しや工作、ます釣りを体験後、小さいころに駆け回った山中で不退転の決意をにじませた。

 打撃3部門の目標値を問われると、何と「引退」の重い2文字を吐きだした。

 「(打撃は)総合的に、バランス良くやることが大事。それができなければ、ボクらの年齢は引退も見えてくる。結果がすべての世界。ファンの人も含めて、1年で信頼は失われるので」

 球界屈指の強打者。来季は3年契約の2年目にあたり、まだ猶予はある。それでも主砲の責任感から自ら進退に触れた。昨季のセ・リーグMVPも今季は散々。統一球の対応に苦しみ、スタンスをオープンからスクエア(平行)にする打撃フォーム変更もあり打撃不振に陥った。打率2割3分2厘、12本塁打、54打点はいずれも中日移籍後ワースト。2軍落ちまで経験した。シーズン中には「これだけ打てなかったことはない」と口にしたこともある最悪の1年だった。

 巻き返しに向け、すでに手は打っている。来季はバットを微調整する。「バランスを手元寄りにして、芯の位置を1センチほど近くしたものを名人に作ってもらう」。すでに契約するミズノ社の職人にオーダー済み。打感が重いとされる統一球対策とみられる。ファンとの質問コーナーで来季の本塁打数を問われると「30本打ちます」と約束。早速自信と手応えが口をついた。

 この日は小雪が舞い、氷点下の寒さだったが和田の胸の内は巻き返しへ、熱く燃えている。「ボクはこういう環境で育ってきた」と話す故郷・岐阜の山奥。原点から、決意を込めて主砲が巻き返す。【八反誠】