新たな名勝負の主役は譲らない。阪神能見篤史投手(32)が25日、都内のイベントに参加し、巨人にFA移籍した杉内俊哉投手(31)に対抗心をみなぎらせた。交流戦での直接対決で能見は3戦未勝利。「やるからには勝ちたい」。ともに開幕投手を務めれば、来年4月6日にも甲子園で激突する可能性がある。伝統の一戦を彩る投げ合いに牙をむく。

 クリスマスムードに華やぐ大都会東京で、能見はライバルの名を耳にすると勝負師の顔になった。今オフ、大補強に乗り出した巨人。中でも目玉は球界屈指の左腕杉内だ。7年ぶりのリーグ制覇をめざす阪神にとっても、大きな壁となることは間違いない。能見にとっても、過去3度の投げ合いで1度も白星を挙げられていない天敵だ。チームを背負って立つサウスポーは、リベンジの思いを口にした。

 「やるからには勝ちたい。勝負の世界だから。ゲームセットまでは、何があるか分からない。求められるものが上がってきているのでね。レベルアップの1つにしたい」

 白星に最も近づいたのが今年6月4日。甲子園で両左腕が、息つく間もない投手戦を演じた。8回まで互いにスコアボードに0を並べる。7回2死満塁のチャンスにも、代打ではなく能見が打席に立った。三振に倒れたが、大黒柱として勝負を任された一戦だった。9回に3安打を浴び2失点。完投しながらも勝ち星は挙げられなかった。

 年は能見が1つ上。ともに、高校時代から全国に名をとどろかせ、社会人を経てプロ入りした。アマチュア時代の対戦はないが、試合会場で目にしたインパクトは今でも鮮明に覚えている。「社会人の時から体がでかかった。尻もでかかった」。だが、能見が3年遅れでプロ入りした時には、杉内はソフトバンクでローテーションを務めていた。通算103勝の杉内に対し、能見は43勝。「向こうの方がだいぶ上ですから」。実績あるライバルに対し謙遜するが、土俵は同じだ。

 能見、杉内がともに開幕投手を務める可能性は十分だ。早ければ、再戦は来季「伝統の一戦」の初戦。4月6日の甲子園で相まみえる。実現すれば、キラー同士の白熱した投げ合いになることは必至。TGの名勝負が新たな時代に入る。【鎌田真一郎】