えっ、もう、そんなに!

 阪神能見篤史投手(32)が15日、沖縄・宜野座村内の宜野座ドームで自主トレを公開し、今年初めて打撃投手を務めた。ブルペン投球を行っていない段階で、関本、柴田らに投じた球数は驚異の238球!

 自主トレ期間中はプロで初めて専属トレーナーも帯同させる。心身ともに万全の状態に整え、エースへの王道を突進する。

 シーズンと違わぬポーカーフェースで、黙々と左腕を振るった。沖縄特有のスコールがたたきつける宜野座ドーム。関本、柴田、小宮山の打撃練習で、能見が今年初の打撃投手を買って出た。

 投球動作のバランス、リリースした白球の感触、打者の反応…。淡々と投げ続け、気づけば1時間20分近く過ぎた。トータルの球数はなんと238球。キャンプ前の段階にしては驚異的な投げ込み量にも、大黒柱は涼しげに言った。

 能見

 軽くですよ。(総球数を聞き)マジですか?

 ちゃんとした(18・44メートルの)距離じゃない。200球も投げている感覚はなかったですね。徐々に仕上げていけばいい。

 今年も独特の「能見式調整」で勝負する。ブルペン投球を重ねてから打者に投げるのが通常の仕上げ方だ。能見はまだブルペン投球を行っておらず、順序が逆。真っ先に打者と向き合うのは常識外れに映るが、実は09年からこの調整法を取り入れ急成長している実績がある。

 能見

 シーズンに入ってから投げる相手は打者。せっかくセキ(関本)さんとか、いい打者がいる。どのコースがどうとか、見えてくる(ものがある)。ブルペン投球で必要なものもあるけど、投げるのが打者相手なのは変わらない。引き出しの1つとして得るものがあれば十分。

 より実戦に近い形の練習を自ら編み出した。昨年同時期も177球を投げたが、今年は200球超え。キャンプインまで精力的に投げ込み、肩を鍛え抜く。豊富な練習量に耐えるため、今年から初めて専属トレーナーも参加。1月の自主トレ期間中だけだが、ケアにも万全を期す。

 能見

 自分の疲れているところがあれば言える。いまの時期は体を作っていく段階で、ケアできるところはしっかりしていきたい。

 12勝した昨季はプロ入り初めて200イニングを突破。勤続疲労を除くためにも、トレーナーは心強い存在になる。

 能見

 一般論で年齢とともに体力は落ちるけど、自分は受け入れていない。もっとレベルアップしないといけない。エースではないし、そういうところに近づいていかないといけない。負け数が多いし、減らしていかないといけない。

 問答無用の238球。正真正銘のエースになるため、自覚十分の本格的始動だった。【酒井俊作】