<ロッテ2-1オリックス>◇10日◇QVCマリン

 ロッテ井口資仁内野手(37)が「洞察力」で今季本拠地初勝利に導いた。最初の読みは打撃だった。0-0の6回2死。1、2打席目は4球目以内に追い込まれ、切り替えた。「追い込まれる前に早めに甘い球を狙う」。初球のカーブ。緩急でカウントを稼ぎに来た絶好球を左翼席へひっぱたいた。均衡を破る今季第1号だった。

 2つ目の読みは首脳陣との合作による走塁。8回1死、右前打で出塁。オリックス西の集中は打者に向けられていた。試合前、モーションが大きくなるスキを狙えと指示されていた。

 昨季1盗塁の37歳ベテランは、01、03年に盗塁王を獲得した獲物の目になった。完璧なスタートで二盗を成功させ、ホワイトセルの右前打で貴重な2点目の走者として生還。「盗塁王は10年前のこと」と苦笑いしたが、大塚守備走塁コーチは「行こうという時に1球で行ってくれる」と絶賛した。

 読む力はグラウンド外でも発揮される。オフの沖縄自主トレ。若手の細谷は夫人の出産が近づいていた。帰京希望をなかなか切り出せなかった時に、井口が察知して帰京を促した。細谷は「言おう言おうと思っていたんですけど、気付かれましたね。出産に立ち会うことができました」と感謝していた。

 ずばぬけた洞察力は経験のたまもの。この日朝はかつての主戦場だった大リーグのテレビ中継を見ていた。「ダルビッシュが投げているのを見て、うらやましかった。川崎も出ていてね。朝から1人で興奮して見ていた」。下克上を起こすために、井口の眼力は欠かせない。【広重竜太郎】