<広島1-1阪神>◇12日◇マツダスタジアム

 3時間42分。今季3度目のドローに阪神和田豊監督(49)の信念が凝縮されていた。7回、小宮山の代打桧山が同点打。幸運な一打は指揮官の攻めの一手が生んだ。正捕手の藤井彰が左頬の骨折で離脱。捕手は小宮山、岡崎と経験値は決して高くないが、オープン戦からの準備が生きた。終盤4イニングを岡崎のリードに任せ、無失点で負けなかった。

 信念が生んだ執念のドローだった。和田野球は負けない。その象徴となる場面が7回にあった。マートン、金本の連打で2死一、二塁。ノーヒッター前田健から数少ないチャンスを得て、指揮官が動いた。小宮山への代打桧山は捕手2人制ではリスクを伴う。それでも攻めに出た。

 和田監督

 あそこは勝負だ。そのために太一はオープン戦から、かぶらせてきた。本人にとっても、いい経験になった。小宮山だけではない。2人で守りきっていかないと。苦しい場面でマスクをかぶれたのは、力になったんじゃないか。

 左頬を骨折した藤井彰の離脱は、チームにとって大きなダメージだ。小宮山と岡崎というキャリアの浅い選手に重要なポジションを任せる。それでも和田監督は慌てなかった。非常事態をにらんで、岡崎にはオープン戦で6試合も先発マスクをかぶらせている。3月4日のオリックス戦(高知)では藤川とコンビを組んだ。この日も息が合わない場面があったが、サヨナラのホームを踏ませなかった。指揮官は言う。「準備なくして、決断はできない。ひらめきもあるが、根拠のないひらめきは、あまり成功しない」。確信の代打桧山-。同点劇の裏には、危機管理への高い意識と選手への信頼があった。

 相手の先発はエース前田健で苦戦は必至だった。ゲーム前半にはバント失敗などミスが出て、走者を進められなかった。完封されてもおかしくない状況で、あの手この手を尽くして同点に持ち込んだ。

 和田監督

 今日に限ってはよく追いついた。この時期に勝ちに等しい引き分けはないが、負けないということは、最後に大きな意味がある。大きな意味を持たせるためにも、戦っていかないといけない。

 開幕から11試合で引き分け数は早くも「3」。いずれも、同点に追いつく展開で、粘り強さを発揮している。この日も勝利に限りなく近いドロー。首位を守って、甲子園で中日を迎える。【田口真一郎】

 ▼阪神が11試合を消化し早くも3引き分け。これは70年に、9試合で3度引き分けたのに次ぐ記録。当時デーゲームは午後6時30分、ナイターは同10時20分を過ぎて新しい延長回に入らない試合制限があった。