<阪神3-4広島>◇3日◇松山

 野球の神様って、なんて意地悪なのか…。「野球」という雅号を使った俳人正岡子規が生まれた松山で、阪神が悪夢を見た。2点リードの9回2死走者なしから、代役守護神榎田大樹投手(25)がまさか、まさかの3失点。1点差とされた2死二、三塁、梵を空振り三振させたが、捕手小宮山がボールをはじき(記録は暴投)、その間に2者が生還。目を疑いたくなるような大逆転負けだった。

 最悪のシナリオが用意されていた。1点リードの9回2死二、三塁。3番梵への6球目だった。カウント2ボール2ストライクから、榎田は外角にスライダーを投じた。ボールゾーンに曲がり、空振りを奪った。しかし、小宮山が捕れない。坊っちゃんスタジアムの広いファウルゾーンを、白球が転々とする。2人の走者が俊足を蹴って、一気に本塁を陥れた。まさか…。想像もできない悲劇が、2死から起こった。顔面蒼白(そうはく)でベンチ裏に出てきた和田監督は「考えられないことが起きているが、今、チームはこれを乗り越えていかないといけないところにきている」と言葉を振り絞ったが、現実を受け入れるには時間を必要とする敗戦だ。

 けが人続出のリリーフ陣と正捕手藤井彰を欠くチームの弱点が、逆転負けにつながった。振り逃げ暴投の直前には、重盗されていた。一打出れば、逆転の状況を相手に許し、榎田は「少し焦ってしまった。2死から落ち着いて投げればよかった」と、冷静さを失っていた。

 嫌な流れはあった。8回裏に先頭の柴田が二塁打で出塁したが、小宮山のバントで三塁タッチアウト。二塁からのスタートが遅れたかに見えた。追加点のチャンスを逸し、試合が一転した。和田監督も「そういうところだ。取れる時に取らないと、こういうことが起きる典型的なゲームだ」と指摘した。

 上位浮上どころか、今日4日にも5位転落の可能性が出てきた。首位巨人とも9・5ゲーム差。和田監督は「これでチームがガタッといかないように、何度でも気を引き締めてやっていく」と努めて前を向いたが、デッドラインが見えてきた。【田口真一郎】

 ▼広島は9回、梵の振り逃げ(記録は三振と暴投)の間に2点を挙げ逆転。振り逃げの間に「決勝点」は昨年7月28日巨人が横浜戦で記録して以来。巨人はスコア2-2からフィールズが振り逃げの間に2点を挙げ勝ち越した。07年7月17日日本ハムは小谷野の振り逃げで2点先制して勝っているが、今回は振り逃げで逆転勝ちとなった。なお、振り逃げで珍しい決勝点が入った例には、94年6月12日イチロー(オリックス)のサヨナラ振り逃げや、60年7月19日山内(大毎)の満塁走者一掃で自身も生還した逆転の4点振り逃げがある。