<ロッテ3-6西武>◇7日◇QVCマリン

 西武中島裕之内野手(30)が大リーグの球団幹部の前で勝負強さを示した。同点の7回、2死二塁で中越えに勝ち越し二塁打。2位ロッテに0・5ゲーム差に詰め寄る一打となった。この日、ダイヤモンドバックスとロイヤルズの幹部が観戦。中島のプレーを見る目的とみられ、今オフにもFAで大リーグ移籍が有力視される中島にとって、貴重なアピールの場となった。

 グライシンガーが指の治療でベンチに戻る中、中島は静かに集中力を高めた。「交代するんかなと思ってて、集中し直さなあかんなと。結局、代わらんかったけど、打ち気にはやってるとこがあったんで、切り替えようとね」。同点の7回2死二塁。再開からの2球目、外角のカットボールを完璧にとらえた。中堅頭上を越える、勝ち越しの適時二塁打。好投する岸を援護する4番の仕事だった。

 スタンドからは鋭い視線が向けられた。大リーグ・ダイヤモンドバックスのタワーズGMら球団幹部、ロイヤルズのメディナGM補佐が集結。今オフに大リーグ挑戦が確実視される中島の視察も兼ねているとみられ、試合前に取材に応じたタワーズGMは「フィジカルはいいものを持っていそう」と指摘。中島が獲得候補であるかについては明言を避けたが「ショートは探している」と補強ポイントであることは明言した。メディナGM補佐も「メジャーに値する選手だと思う」と高評価を与えた。

 ざわつく周囲とは対照的に、当の本人は無関心を装った。「僕の口からは何も言えないですよ。グラウンドにいるのはわかったけど、僕だけを見に来たんじゃないでしょ」。メディナGM補佐は試合終了まで視察、今日8日のロッテ戦も訪れる予定。すでに20試合チェック済みで、夢に向けたアピール打にもなったが、今の中島の心にあるのは、再び迎え入れてくれた西武への恩返しと日本一だけだ。

 チームの危機も救った。主砲中村が左膝痛の状態を考慮され欠場。渡辺監督が「前向きな休養」と話したように、先を見据えた決断だったが、代役4番が存在感を発揮した。「4番っていうのを知ったのは、チームメートから言われてなんで…。シートノックまで知らんかった」。2位ロッテとの差を0・5に詰めた殊勲者は、どこまでもマイペースだった。【久保賢吾】

 ◆視察2球団の遊撃手事情

 今季ダイヤモンドバックスの遊撃は万能選手のブルームクイストが最多出場だが63試合にとどまり、1番タイプで0本塁打、20打点と長打力には欠ける。控えで27試合出場のドルーは打率2割2厘と不振で、相互のオプション付きながら今季終了後FAとなる可能性もある。ロイヤルズは25歳で移籍2年目のエスコバルが不動のレギュラーで、打率3割と好調もキープ。ただ三塁を守るムスタカスはメジャー2年目で経験不足の面もある。