<巨人1-1阪神>◇7日◇東京ドーム

 あきらめてたまるか!

 阪神藤川球児投手(32)が、志願の2イニング救援で巨人戦をドローに持ち込んだ。1-1の9回に登板して無失点に抑え、今季初めて回をまたぎ延長10回も続投。3者三振で締めた。ネット裏からヤンキースの首脳が熱視線を送る中、守護神のプライドを見せつけた。

 猛虎の意地を背負って、マウンドに上がった。1-1の同点で迎えた9回、守護神・藤川が巨人打線に立ちはだかった。先頭の村田にヒットを許したが、代走鈴木の盗塁を小宮山とのコンビで刺した。高橋由には四球を与えたが、石井、長野を落ち着いて抑えた。この時点で試合開始から3時間28分。あと2分というところで延長へ突入した。

 藤川

 時間稼ぎ?

 そんなことするつもり、まったくなかった。こっちは時間稼いでも意味がない。

 引き分けじゃだめだ-。願いもむなしく、延長10回の攻撃は無得点に終わると、藤川は勝利のないマウンドにも立った。今季初の2イニング。圧巻の3者連続三振で締めくくった。

 和田監督

 2回うんぬんじゃなく我々は勝つしかない。10回もやりたかった。球児も行きますと言っていたんで。

 指揮官の采配に藤川も呼応した

 藤川

 2イニング目に入るといい感じで投げられた。(10回は)いってくれと言われた。自分も疲れはなかったし、試合の感覚がなかったので、自分的には2イニングいってよかったです。チームにとっても、自分にとってもよかった。

 ベンチと守護神の勝利への執念が一致した今季初のイニングまたぎ。20ゲーム差をつけられ、6連敗中だった宿敵巨人にせめてもの意地を見せた。

 そんな藤川にネット裏からは熱い視線が注がれていた。この日はダイヤモンドバックス、インディアンスなどメジャー複数球団が視察に訪れたが、その中に名門ヤンキースのビリー・エプラーGM補佐の姿もあった。ともに視察した紀田極東担当スカウトは「FA選手を中心にチェックしていますから」と具体的な名前こそ挙げなかったが、今オフに阪神から海外FAとなる選手の目玉は藤川、鳥谷だ。日本までわざわざ視察に訪れた理由は、メジャー志向を公言している藤川らの現状チェック以外には見当たらない。

 現在、ア・リーグ東地区の首位を走るヤンキースはイチローを電撃トレードで獲得するなど戦力を充実させているが、常勝を義務づけられる名門がさらなる戦力強化のために球界屈指のストッパーに目をつけてもおかしくはない。すでにレンジャーズ、マリナーズのスカウト陣、ダイヤモンドバックスの球団首脳が視察。名門ヤンキースも加わった。周囲が騒がしくなる中、藤川は代わりのいない守護神としてマウンドに上がり続ける。