<巨人9-1ヤクルト>◇11日◇東京ドーム

 巨人高橋由伸外野手(37)が、グランドスラムで通算300号本塁打に王手をかけた。ヤクルト戦の5回2死満塁、右翼席へ7号。今季2本目、通算9本目の満塁本塁打で原監督の8本を抜き、阿部と並ぶ球団史上2位に躍り出た。チームは阿部の先制2ラン、ホールトンの1号ソロなど1発攻勢で今季2度目の7連勝を決めた。貯金は29と増えるばかり。ちょっと強すぎるかも?

 振り抜いてすぐ、高橋由は体を三塁側に傾けた。右翼ポールと打球の位置関係を確認した。捉えたのは5回2死、ヤクルト阿部の3球目、チェンジアップだった。「手応えは良かった。うまくバットに、引っ掛かった感じがした」から、スタンドに届く感触はあった。切れる心配はないと分かると、そうっとバット置いて駆けだした。通算299号は、美しい弧を描いた満塁本塁打だった。

 15年間かけて、コツコツ積み重ねてきた。300号への意気込みは「ホームランはなかなか出ない。1カ月、出なかったりする。分からないよ」と、やんわり制した。今季満塁で6割、16打点の勝負強さにも「特には」。夏場の取り組みについても「特に変わっていない」だった。ただ少し口調を遅くして「毎日毎日、同じ形を繰り返すこと。それだけを心掛けています」と丁寧に言うだけだった。

 ホームランから「いつも謙虚であれ」と教わった。2年前の6月5日、日本ハム戦。高橋由は2打席連続本塁打を打った。次の打席で3本目を狙ったが空振り三振し、悔しさのあまりバットを折った。自分の欲をぶつけた行為を「いつもお世話になっているバットに、非常に失礼なことをした」と猛省した。

 使えなくなったバットは回収され、はしなどに再利用されることが主流となっている。めったに折ることのない高橋由だが「お手数で申し訳ないんですが、しっかり供養してあげて下さい」と担当者に託すことにした。SSK社、白木の相棒がホームランを打たせてくれる。感謝の気持ちがあるから、大風呂敷を広げなかった。

 「もっともっと、厳しい戦いが来る。明日もいいバッティングが出来るように頑張ります」と結んだ。東京ドームのロッカーには、折ったバットが今も鎮座している。節目の300号も淡々とクリアする。【宮下敬至】

 ▼巨人高橋由が5回、今季2本目の満塁本塁打。シーズン2度の満塁弾は3本放った99年以来。通算9本目となり、巨人ではプロ野球最多15本の王に次いで阿部に並ぶ2位タイ。