<楽天1-5日本ハム>◇24日◇Kスタ宮城

 楽天のルーキー島内宏明外野手(22)が、完封負けを逃れる豪快なプロ初本塁打を放った。3回2死で、日本ハム吉川の初球を完璧にとらえて右翼席まで運んだ。6回にも中前打を放ち、3打数2安打で3試合連続の複数安打をマーク。打線全体が3安打と沈黙する中で1人気を吐き、チームは敗れたが今後への希望を膨らませる活躍となった。

 必死のスイングがメモリアルアーチを生み出した。2点を追う3回2死。島内は日本ハム吉川の初球、150キロの直球を懸命に振り抜いた。完璧にとらえた打球がプロ初本塁打となって右翼席中段に沈んでいく。22歳のルーキーは「しっかりスイングをすることを意識していました。ホームランを打ったという実感はないですが、打ててとてもうれしい」と喜びを隠さなかった。マスコット人形をスタンドにうまく投げ入れられず、やり直した初々しさもベンチの雰囲気を明るくした。

 このひと振りが劣勢をはね返した。島内の1号は抜群の立ち上がりを見せた吉川からのチーム初安打。これで1点差に詰め寄ると、2回までに2失点の先発辛島は3回から見事に立ち直った。打線はその後も快調に飛ばす吉川の前に走者も出せず苦しんだが、6回1死で再び島内がスライダーを中前に運んだ。3試合連続の複数安打をマークし、首位チームの勝ち頭を相手に孤軍奮闘した。

 ドラフト6位ながら、好素材がめきめきと力を伸ばしてきた。バットをボールにぶつけるような打撃フォームから、2軍でついたあだ名は「ハンマー」。田代2軍打撃コーチは「思い切りがよくてミート力がある」と潜在能力の高さを認める。夏場はパワフルなスイングを生かすため、体が開かないようぎりぎりまで引きつけてヘッドスピードを上げて打つ練習を繰り返した。その積み重ねが生んだ豪快なプロ1号だった。

 チームは敗れ、連勝が2で止まった。首位日本ハムとの差は7・5ゲームに開き、自力優勝も消滅した。星野監督は島内について「ここ3試合、いい仕事をしている」と打率6割6分7厘の活躍を高く評価。続けて「でも団体競技だから、他の選手が仕事をしないといけない」と、ルーキーの活躍を生かせないチーム状態を嘆いた。

 前夜に6勝目を挙げた18歳の釜田、この日は敗れたが内容のある投球を見せた21歳の辛島。野手でも島内が加わり、伸び盛りの若手がそろってきた。後は中堅、ベテランが息を吹き返せば、ここからの巻き返しも十分に現実味を帯びてくる。【大塚仁】