海外他球団への移籍が可能なフリーエージェント(FA)権を取得している阪神藤川球児投手(32)が、権利を行使し、メジャー挑戦する決意を固めたことが4日、分かった。すでに、代理人にアーン・テレム氏(58)と団野村氏(55)を選定。今年1月にダルビッシュのレンジャーズ移籍を手がけるなど実績十分な両氏と組み、夢への第1歩を踏み出す。

 強い阪神を支えてきた藤川がチームを去る。今年4月に取得した海外FA権を行使する覚悟を固めた。かねてから「アスリートとして、前を向いて、たえず成長していきたい」と話してきたが、来季のステージとして米大リーグを目指す。

 この日、藤川は兵庫県内で取材に応じ「残り試合を精いっぱい戦うことしか考えていない」と話し、自らの去就に関する明言を避けた。不動の守護神は今季から投手キャプテンに就任。若手が多い投手陣のリーダーとしてチームに貢献してきた。優勝の可能性はすでに消滅。クライマックスシリーズ進出も厳しい状況だが、目の前の一戦を全力で戦い抜く覚悟だ。

 そんな状況で、トップアスリートとして向上心は燃えさかる一方だ。メジャー移籍を見据え、8月中旬までに代理人の選定も完了していた。交渉役として団野村氏とアーン・テレム氏に依頼する。野村氏は野茂英雄氏や故伊良部秀輝氏が大リーグに移籍する際に代理人を務めるなど、米球界に精通。テレム氏も松井秀喜の代理人として大型契約をまとめ、今年1月には野村氏とタッグを組み、ダルビッシュ(当時日本ハム)をレンジャーズ移籍へと導いた。経験、人脈とも申し分のない強力コンビが球児をサポートする。

 藤川は07年12月の契約交渉で初めてメジャー挑戦の意志を公言。球団から却下された後もポスティング制度での移籍を目指したこともあり、積年の夢として抱き続けた。阪神ではリリーフエースとして常に全力投球。チーム愛も強く、お立ち台で涙を流したこともあった。球団側と残留交渉に臨む余地は残されているが、退団の意志は固い。男として筋を通し、今オフは憧れのマウンドへと向かう。

 この日は甲子園にパドレス、ダイヤモンドバックス、レンジャーズなどメジャーのスカウトが集結した。ツインズの高橋スカウトは「うちはセットアッパー、クローザーが手薄だし(補強対象に)当てはまる選手になる。リリーフがいない球団はとりに来るのではないですか」と話した。救援陣が不安定な球団は多くチャンスは十分。球史に名を刻んだクローザーが、一世一代の勝負に打って出る。

 ◆藤川争奪戦

 今春宜野座キャンプをレンジャーズのスカウトが初視察し、ブルペン投球に熱視線を送る。7月27日DeNA戦(甲子園)はマリナーズのケリー環太平洋担当部長らスカウト陣が観戦。8月2日にはダイヤモンドバックスのホールCEOら首脳が甲子園でヤクルト戦を見守った。8月15日のDeNA戦(横浜)は、藤川の登板はなかったものの、ヤンキース、レッドソックス、レイズ、オリオールズ、ロイヤルズ、ジャイアンツ、インディアンス、フィリーズ、ドジャースの9球団が観戦。10球団を超える球団が藤川の動きに注目している。