阪神元監督の中村勝広氏(63)が5日、球団初のGMに就任した。大阪市内の電鉄本社で臨時の株主総会及び取締役会が行われ「取締役GM」として正式に承認された。組閣、補強、育成など難題に取り組む中村GMは、今日6日の会見を前に早くも打倒巨人を宣言。その夜、チームはG戦連敗を9で止め、GMの船出に呼応した。

 屈辱の日々にようやく終止符を打った。巨人戦の連敗は「9」でストップ。しかし素直には喜べない。対戦成績は4勝13敗3分け。優勝間近と5位に沈むチームの差は歴然だった。ライバル球団だけに、余計に悔しさは募る。ここからいかにチームを再建するか。タイガースの命運を握る球団初のGMがこの日、誕生した。

 「西の雄であるために、ジャイアンツにヒケを取るわけにはいかない。打倒巨人だと、現役時代、監督時代もそう思っていた。宿命のライバルだけど、ライバルと言うのが、おこがましい結果になっている。追いつけ追い越せという気持ちは強いですよね」

 大阪市内の電鉄本社で行われた臨時の株主総会及び取締役会で阪神元監督・中村勝広氏の「取締役GM」が正式に決定。宝塚市の自宅で取材に応じ、決意を表明した。生え抜きGMの口から出たのは、やはりG倒への思いだった。

 猛虎再建へ、問題は山積だ。首位巨人と26・5ゲーム差という戦力差を埋めなければならない。南信男球団社長(57)は「球団の編成部門を中心に統括していただく。ユニホーム組にも指導や助言をしてもらうことになる」と役割を説明した。そこには選手起用に関するアドバイスも含まれているという。現場介入の権限を与えてまで、チームの建て直しに臨むことになる。

 チームの低迷、そして観客動員の大幅減少。球団フロントの危機感が、中村GMの誕生を急がせた。南球団社長が最初にコンタクトを取ったのは、8月11日。そこから1カ月足らずのスピード就任となった。2年目を迎える和田阪神のコーチ陣のテコ入れ、育成機関であるファーム組織の見直し、スカウト部門の検証。世代交代も進んでいない現状もある。守護神藤川がメジャー移籍を視野に海外FA権の行使を決断。鳥谷や平野の残留交渉もある。戦力補強にも力を注がなければならない。異例とも言えるシーズン中の就任で、さっそく大改革に着手することになる。中村GMは責任の重さを自覚している。

 「常勝チームとしての再建は待ったなしではありますが、これからチームを正確に分析する。1年、1年の勝負。もう、この年ですから。仕事の中身を評価するのではないですか」

 きょう6日の就任会見が終われば、鳴尾浜視察やオーナー会談などスケジュールは詰まっている模様だ。1年契約の取締役GM。与えられた時間は多くない。【田口真一郎】

 ◆中村勝広(なかむら・かつひろ)1949年(昭24)6月6日、千葉県生まれ。成東-早大。71年ドラフト2位で阪神入団。内野手。82年に現役引退。通算939試合に出場し、打率2割4分6厘、76本塁打、219打点。引退後は阪神のコーチ、2軍監督を務め、90年に阪神監督へ就任。92年には亀山、新庄ら若手を登用し、前年最下位のチームを2位に躍進させた。95年途中に成績不振のため辞任。03年9月に、オリックスGMに就任し、06年はGMからオリックス監督へ転身。オリックス監督は1年限りで、その後も球団に残り、09年まで球団本部長などを務めた。

 ◆GM(ゼネラルマネジャー)

 監督、コーチ、選手の人事権を持ち、選手獲得やトレードなどチームづくりの最高責任者。米大リーグでは一般的でアスレチックスのビリー・ビーンGMの書籍「マネー・ボール」は映画化された。日本は球団代表などが同様の職責にあたってきたが、95年にロッテが広岡達朗氏を初起用。その後、オリックスが中村勝広氏、楽天がキーナート氏と三村敏之氏、ソフトバンクが王貞治監督を兼任で起用。日本ハムは高田繁氏(現在DeNAでGM)と山田正雄氏、巨人も清武英利氏、原沢敦氏を起用。現在GMがいるのは日本ハム、巨人、DeNAの3球団。