<西武4-3オリックス>◇12日◇西武ドーム

 西武涌井秀章投手(26)がリベンジの22セーブを挙げ、首位に返り咲いた。場面は前夜と同じ1点リードの9回。結果を求めた先に選んだのが、直球主体のパワーピッチングだった。「抑えになりたての時のように、真ん中でいいくらいの気持ちで、力で押していこうと」。前日35球の疲れも見せず、先頭日高からこの日最速の147キロ直球で空振り三振を奪った。高めに浮いても、空を切ったのは力があったから。慎重に攻めて2戦連続して黒星を喫した反省を、力勝負で乗り越えた。

 もがき、苦しんだ日々があったからだった。開幕投手を任されながら、不振で2軍に降格。遠投、キャッチボールで投球フォームを試行錯誤したが、本来の真っすぐには戻らなかった。悩み抜いた末に、決断したのが、右肘の高さを上げることだった。「上からたたく意識で。ボールの質を求めた結果です」。投げ込みで細かく修正を重ね、直球のキレと威力がよみがえった。この日投じた全14球中10球が直球。心の切り替えを結果で示せた裏に、直球の復活があった。

 連敗を4で止め、首位奪取とともに、守護神がリベンジに成功する価値ある1勝だった。前日の敗戦後、「自信を持て」と声を掛けた渡辺監督は「ワク(涌井)にセーブをつける意味。早い方がいいなと。あのポジションを投げるピッチャーは勝ちゲームで終わるのが仕事だから」と評価した。試合後、駐車場で鉢合わせた涌井と監督。「ワク、良かったよ」と褒める指揮官の声に、「悩んだところから、スタートできた」と涌井は少しだけ表情を緩めた。【久保賢吾】