<ソフトバンク2-6楽天>◇13日◇福岡ヤフードーム

 天国の父にささげる白星だ。楽天ブランドン・ダックワース投手(36)が来日初勝利を挙げた。カーブ、チェンジアップでコーナーを丁寧に攻め、ソフトバンク打線を8回途中4安打1失点に抑えた。7月末に来日した日に、69歳だった父ジェームスさんを肺がんで亡くしたことを告白。チームの連敗を2で止め、CSへ望みをつなぐ大きな勝利は、自身にとっても意味のある勝利だった。

 初勝利の感想を求められると、ダックワースは質問者の方を見ながら口を開いた。「とても気持ちが良いです。この勝利を、来日した日に亡くなった父にささげたいと思います」。メジャー通算23勝。マイナーでは105勝の経験を買われ、7月26日に来日した。異国にたどり着くと、残念な知らせが待っていた。父ジェームスさんを肺がんで亡くした。69歳だった。「数カ月は大丈夫だと思っていたのですが…。日本行きに賛成してくれた。初勝利をささげると決めていました」と、高ぶる気持ちを抑えるように明かした。

 持ち味を生かし、登板3試合目で白星をつかんだ。140キロ前後のシュートに、落差のあるカーブ、ストンと落ちるチェンジアップを配した。打たせて取るのが身上だが、1回2死からは5者連続三振。2回には、ペーニャ、多村と追い込んでからカーブで見逃しを奪った。無四球で8回途中まで投げ、星野監督も「初対戦で向こうは戸惑っただろう。コントロールが良い。リズム良く投げてくれたね」と目尻を下げた。

 父だけでなく、家族が支えになっている。来日当初、妻と、もうすぐ小学生の長女も来日していた。仙台駅近くのホテル住まい。Kスタ宮城までの通勤は、もっぱら電車だ。仙石線で片道4分、140円。球団がタクシーを手配しようとしたが「お金がかかるよ」と切符を握った。本当の理由は、長女が大の電車好きだから。娘と一緒に球場に向かった。休みの日には、球団職員から観光情報を入手。家族で松島を巡ったが、もちろんその際も電車の旅だった。

 8回に交代を告げられベンチに下がる時、帽子を取って球審にも頭を下げた。「3連敗は避けたかった。勢いに乗って行きたいですね」。逆転CSへ向け、頼りになるジェントルマンが加わった。【古川真弥】

 ◆ブランドン・ダックワース

 1976年1月23日生まれ、米ユタ州出身。97年ドラフト外でフィリーズ入団。01年にインターナショナル・リーグ(3A)の最優秀投手に選出され、同年8月にフ軍で初昇格。翌02年は開幕からローテ入りし自己シーズン最多8勝(9敗)。今季はレッドソックス傘下3Aポータケットで、松坂や田沢の同僚だった。メジャー通算23勝34敗、防御率5・28。右投げ右打ち。188センチ、97キロ。