魔球はいらない!

 阪神ドラフト1位藤浪晋太郎投手(18=大阪桐蔭)が新球種の開発を封印した。鳴尾浜の新人合同自主トレがオフだった18日も、ドラフト6位緒方凌介外野手(22=東洋大)と自主練習。2人の間で「魔球」が話題になったが、藤浪はぶれずに現在のスタイルを磨くことを誓った。

 無回転のボールが揺れながら落ちる。藤浪がパソコン画面の“魔球”にくぎ付けになった。寮の自室で食い入るように見つめたのは中日岩田が投げる「ナックルフォーク」の動画だった。雪が降るほどの寒さの中、新人合同トレの休日を返上して体を動かした。身長差20センチ以上の藤浪と緒方が並び、鳴尾浜球場を走る。2人の間で話題になったのが、その「魔球」だった。

 藤浪

 たまたま見つけて、見ました。谷繁さんが捕り損ねたりしていた。すごい球でした。

 今季25年目の名捕手でさえ簡単にキャッチできない、文字どおりの魔球だった。研究熱心な藤浪が野球関連の映像を見るうちにたどり着いた。興味は持ったが、自分のスタイルは曲げなかった。大阪桐蔭では自由時間のキャッチボールなど、遊びとしてナックルの握りを試したことはあるが、実際の投球に魔球は必要ないと力強く封印した。

 藤浪

 本気で投げようと思ったことはないですし、今後も投げようとは思わないです。投げようと思ったら、投げ方も変えないといけない。ストレートや他の球種を犠牲にしなければならない。極めればすごいピッチャーになれると思うんですけど、そのつもりはありません。

 甲子園春夏連覇の自信がみなぎる。153キロの直球を武器に、強力なスライダーなど多彩な変化球をすでに操っている。これまで磨いてきたボールに影響するリスクを負ってまで新球に挑む気はなかった。

 新人合同自主トレ初日の10日からブルペン入り。プロでも独自の考えを守り、貫いてきた。投球スタイルも同じだ。培ってきたものを磨き、この世界で戦う。18歳の強い意志がみなぎっていた。【山本大地】◆藤浪の球種

 ストレートは常時140キロ台を記録し、最速は153キロ。変化球では一番の決め球はスライダー。横方向に大きく鋭く曲がる。選抜制覇後には緩急を生かすため、チェンジアップ、カーブ、フォークにも磨きをかけた。スピードのあるカットボール、ツーシームも投じる。