<オープン戦:ヤクルト1-0阪神>◇18日◇神宮

 阪神の新外国人ブルックス・コンラッド内野手(33)が開幕前哨戦で大暴れだ。神宮でのヤクルトとのオープン戦に6番三塁で先発し、10打席ぶりの安打を含む2安打。二塁から本塁を狙った走塁では、代名詞のハードタックルを相手捕手に見舞った。敵将・小川監督から闘争心をたたえられるほどの存在感で、強烈なインパクトを残した。

 コンラッドは、無安打で迎えた7回、ヤクルト押本から左前打を放った。今成のヒットで二塁へ進むと、続く大和の左前打で一気に本塁へ突進した。アウトのタイミングだったが、ここからが本領発揮だ。体ごと飛び込んで、捕手中村を吹き飛ばさんばかりの猛タックルを見舞った。タッチアウトになっても、無得点で沈みがちだった阪神ベンチを盛り上げた。

 「いい投手だけど、何とか粘って打ててよかった。いいチーム、いい投手もそろっているしね」

 9回にも松岡から痛烈な二塁打を放った。試合後は紳士的に相手をたたえたが、もはや代名詞となりつつあるハードタックル、全力プレーは間違いなく、相手ベンチ、神宮のファンに強烈なインパクトを与えたはずだ。

 事実、試合後にはヤクルト小川監督がコンラッドを称賛した。

 「集中して、全てに一生懸命やっていると思う」

 敵将からわざわざ、名指しでたたえられた意味は大きい。開幕戦の相手に脅威を植え付けられたとすれば、これ以上の収穫はないだろう。初めて体験した神宮球場もすでに自分の“庭”であるかのような雰囲気だった。

 実はこの打席まで9打席連続で凡退していた。「意識はしていなかったよ。感触は悪くなかったし、気にしていなかった」。10打席ぶりの安打にもそう言ったが、やはり、開幕の舞台となれば燃える男だ。オープン戦ながら、公式戦と変わらない全力プレーで敗戦の中に光をもたらした。

 開幕まで2週間を切った。あと10日後には再び同じ芝を踏み、同じ相手と真剣勝負で戦う。この日、敗れはしたが、コンラッドは確実に神宮に爪痕を残した。【鈴木忠平】