<阪神4-3中日>◇2日◇京セラドーム大阪

 松田聖子に逢(あ)うなり、サヨナラ勝ちだ-。和田阪神がホーム開幕戦で、苦手中日に競り勝った。決めたのはニューフェース西岡剛内野手(28)。3-3の9回無死一、三塁から右前に勝負を決める適時打を放った。「必死のパッチです」って関西弁も、どこか格好いい。アンタがいれば、競り合いに弱かった昨年までの虎にもサヨナラだ~。

 西岡が劇勝と爆笑を呼び込んだ。2試合連続で完封負けを喫していた重苦しい空気を断ち切った。お立ち台では、「ツヨシ節」がさく裂する。360度黄色に染まった虎党に「こんにちは!

 2年間のアメリカ旅行から帰ってきた西岡です!

 申し訳ない結果で帰ってくることになりましたが、命かけて、阪神のために頑張ります。必死のパッチで頑張るで~」と声を張り上げた。

 押せ押せでも冷静だった。同点の9回無死一、三塁。ここまで4打数無安打、1失策。「ここで打たな、どん底まで落ちる」と言い聞かせ、開き直って打席に向かった。初球、内角への142キロをファウル。心は決まった。「(中日としては)外野フライもだめな状況。一番グシャッてなるのがインコースなんで。絶対来ると、読めましたね」。2球目の内寄り直球を狙い澄まし、右前へ運んだ。「打った瞬間ヒットでしたけど、いいとこ取りですね、ただの。それまで全く打たへんし、エラーするし、何やってんのかわからんです。最後のヒットでチャラになったと思います」と笑顔を見せた。

 クールなイメージが先行しがちだが、チームの勝利を第一に考える熱血漢だ。ベンチでは最前列で声を張り上げる。自身が凡退すれば、相手投手の情報を味方に耳打ちする。大阪桐蔭の後輩・藤浪がマウンドに上がれば、要所で駆け寄り、笑わせてルーキーの心をほぐす。チームを見渡し、心配りも抜群。この日も「みんながヒーロー」と、チャンスメークの坂や小宮山をたたえた。

 お立ち台に向かう前、最年長の桧山に「面白いこと言えよ。何言ってもウケるから」と送り出されると、「すべられへん」とナニワの血が騒いだ。自虐ネタや、毒舌交じりの爆笑トークが次から次に、口から自然とあふれ出た。千葉、ミネアポリスを経て、大阪桐蔭時代以来11年ぶりの地元。「ただいま」のあいさつとしては十分すぎる一戦となった。

 チームの連敗は2でストップ。ホーム開幕戦を劇的な展開で制し、勝率も5割に戻した。「何とか連敗を止めようとね。大阪での開幕は、みんなで『この一戦を大切に』ということを言っていたのでね。勝てて良かったと思います」。新生猛虎のニューリーダーが、沈滞ムードを変えた。【山本大地】

 ◆必死のパッチ

 「猛烈に、一生懸命」を表す関西弁。08年4月19日のヤクルト戦(神宮)で雨の中、宮本のライナーを横っ跳びで好捕した関本が「芝も滑るし、必死のパッチです」と使い始めると、7月22日の巨人戦(甲子園)でお立ち台に上がった矢野も「必死のパッチだった」とコメントし、阪神ファンに浸透し始める。