<巨人2-1西武>◇18日◇東京ドーム

 巨人菅野智之投手(23)が、交流戦新人最多となる12奪三振の力投を見せた。4回に先制点を許しながら粘り強く投げて9回6安打1失点。リーグ単独トップの6勝目はならなかったが、鋭いスライダーを武器に8回除いて毎回三振を奪った。1-1の延長10回、西武の失策でサヨナラ勝ちが転がり込んで3連勝となった。

 菅野が笑った。うなずいてセットポジションに入った。同点の9回2死一、二塁。相手は片岡だった。外角低めへ、しつこく変化球を集めていた。4球カットされた後、10球目だった。「阿部さんを信じて投げていた」136球目の要求は、9球目までを伏線とした、虚を突くボールだった。

 内角低めのスライダーだった。「集中していて、あまり覚えてなかった」。片岡の腰が一瞬引けた。ことごとく当てていたバットが動かなかった。「構えたところにいったので、狙い通りだったのでしょう」と、後で分かった。見逃し三振でグラブを強くたたいた。固唾(かたず)をのんで見守っていた東京ドームの空気を変えた。「今後の野球人生にとっても、忘れられない対戦になった」とお立ち台で言った。

 片岡への10球には、菅野のすごみが詰まっていた。2ボールからの3球目。外角低めいっぱいにスライダーを収めた。有隅球審が一瞬間を置いて、ストライクのコール。ここで西武渡辺監督が動いた。「ボールではないか」と、鬼の形相で確認した。菅野は対照的に、能面で対戦を待った。4球目。まったく同じ場所へ、カットボールを制球してみせた。フルカウントの勝負になったが、主導権は終始、ルーキーの側にあった。

 試合全体の主導権も、したたかに握っていた。「先に点を取られてしまって」と反省したが、実は、イニング間の使い方に細工を施していた。走ってベンチから飛び出し、あっという間に投球練習を済ませ、西武打線を待ち受けた。その間、平均で1分10秒。西武先発の岸より約30秒も速かった。「ネクストの打者にタイミングを取らせたくないので」と狙いを明かした。

 目だけがキョロキョロとせわしなかった。「相手を見透かしているという印象を与えたい。相手ベンチの雰囲気。打者の反応。三塁コーチャーのサイン。最後は味方の守備位置です」と、ロジンバッグを1度も触らず洞察を続けた。「ロジンをつけてもボールは速くならない。小さな積み重ねが大きな差となる」。9回まで保ち続けた集中は、サヨナラ勝ちで報われた。

 白髪が数本あった。「軽々しいことは言えない。そんな甘い世界じゃない」と言った。神経を研ぎ澄ませてしのぎ合いを制す。菅野はプロで生き抜くすべを知っている。【宮下敬至】

 ▼菅野が12三振を奪い、今季2度目の2ケタ奪三振。交流戦で2ケタ奪三振をマークした新人投手は、11年5月23日沢村(巨人)がオリックス戦で11三振を奪って以来2人目。12奪三振は交流戦の新人最多記録となった。巨人の新人で2ケタ奪三振を2度以上は6人目で、12奪三振以上は36年沢村が11月19日名古屋戦で14個、79年江川が8月26日広島戦で12個、03年木佐貫が7月6日中日戦で15個、7月21日広島戦で12個記録して以来4人、5度目だ。