<楽天1-0ヤクルト>◇19日◇Kスタ宮城

 楽天高須洋介内野手(37)が唯一の得点をたたき出した。ヤクルト戦に「6番三塁」で出場。先発八木を打ちあぐねて迎えた6回の第3打席で内角球を鋭く振り抜き、中犠飛を放った。これが決勝点となり、先発永井に今季初白星をプレゼント。出場機会は減っているが、“必殺仕事人”の異名をとる勝負強さは健在だった。

 2週間弱の長期遠征から帰った本拠地初戦。仙台は気温10度にせまるほど冷え込んでいた。「もう年だから、体にきついね」。穏やかに話す高須には、打席でも気持ちに波がない。6回1死満塁。ストライクゾーンに来た球は、すべて打ちにいった。ファウルで追い込まれても、慌てない。「最後が一番甘かった」とコンパクトなスイングで乗せた打球は、犠飛として十分な飛距離だった。

 「永井が頑張ってたんでね。バットに当てればと。最低限の仕事ができた」と淡々と話す姿が、いつもながら頼もしい。今日20日が娘の誕生日だった先発永井の白星をアシストしたが、高須も最愛の家族が支えになっている。夫人の実家である神戸に住んでいた長男の瑛太郎くん(9)が、今年春から仙台に引っ越してきたばかり。一緒に暮らし始めたことが、新たなモチベーションとなっている。

 遺伝子は受け継がれている。野球を始めた瑛太郎くんが引っ越しする前、所属していた少年野球チームのお別れゲームでランニング本塁打を放った。「おれに似たのか、体は同級生の中でも小さい。それでも、大きな人に負けないで立ち向かっていく根性がある」とパパの顔になって話す。その打撃センスは、まさに父親譲り。野球の楽しさを満喫している自慢の息子が、大事なことを思い出させてくれる。

 今年の初安打は、開幕して12打席目だった。結果が出ない時も、落ち着いた物腰は変わらなかった。「なんでだろうな。あまり数字とかが気にならなくなった」と、まるで悟りを開いたかのようだった。球団創設からチームを知る初代メンバーの残り少ない1人として、個人的に望むことは少ない。どんな形でも、貢献して、何かを残せればいい。無安打の決勝打が、フォア・ザ・チームの精神を体現していた。【柴田猛夫】