<楽天4-10巨人>◇23日◇Kスタ宮城

 巨人長野久義外野手(28)が、鋭敏な勝負嗅覚でチームの連敗を3で止めた。初回に美馬から2試合連続の先頭打者弾となる8号ソロを左中間スタンドに運んだ。前日22日はエース田中から出合い頭の1発を放ち、守備では冷静な判断も見せていた。開幕から、なかなか調子が上がってきていなかったが、切り込み隊長の状態が巨人の勢いにも比例してくる。

 デジャブのようだった。初回、カウント1-1、そして144キロの速球系。違っていたのは相手が田中でなく美馬。24時間前の光景を長野が繰り返した。高々と上がった一撃は左中間スタンドへ。2戦連発の先頭打者弾という離れ業で、3連敗中と苦しむ打線の導火線に火をつけた。初回に6安打で6得点の波状攻撃に成功。だが長野は威勢のいいコメントは発しず「出塁していい流れをつくりたいと思っていたが、自分自身も驚いている」と話した。

 言葉は控えめだが、長野の持ち味である動物的な嗅覚は鋭さを増している。前日の先頭打者弾直後の守備。楽天松井の右中間突破の当たりはバウンドしてフェンスとラバー部分の間に挟まった。高さ約190センチのラバーに奥行きが約20センチ。身長180センチの長野が跳びはねても簡単には見つからない。手間取って見つけても松井の足なら三塁打、さらにランニング本塁打の可能性も広がる。だから長野はボールデッドの状態を主張するように、探すのをあきらめた。そしてエンタイトル二塁打と判定された。

 「仮に取れたとしても松井さんの足なら三塁打。審判の方にもイニング間に『冷静だね』と言われました」。Kスタ宮城開場以来、初のケース。それに導いた冷静な戦況眼をほめられた。審判はこの日の試合前に右中間の位置で、巨人関係者に前日のプレーを再現させて写真に収めた。中村審判員は「こういうケースがあるということを資料として撮影した。2メートルある選手なら捕れるかもしれないけど」との見解を示した。

 長野が元気になれば、巨人も活気づく。原監督は「彼らしい、思い切りの良さが出てきた。今後が楽しみ」と期待を寄せた。長野は「チームも3連敗していて何とかしたかった。また明後日から頑張りたい」と殊勝な言葉を並べた。勝利のにおいをかぎ分けるリードオフマンが、25日からのオリックス戦で日本記録に並ぶ3試合連続先頭打者弾に挑む。【広重竜太郎】

 ▼長野が前日に続いて初回先頭打者本塁打。2試合連続初回先頭打者本塁打は10年9月18、19日片岡(西武)以来、3年ぶり。巨人では54年8月15日広岡が国鉄戦のダブルヘッダー、56年6月24日与那嶺が国鉄戦のダブルヘッダー、07年7月25、26日高橋由が横浜戦で記録して以来4人目。過去3人は2試合とも1回裏に記録しており、巨人で2試合続けて1回表に打ったのは初めてだ。プロ野球記録は93年8月20~22日松永(阪神)の3試合連続で、長野が次の試合で2人目の記録に挑戦する。