<阪神2-1日本ハム>◇25日◇甲子園
サヨナラ勝利の瞬間、笑顔の花が咲く中に、ただ1人、泣いている男がいた。阪神大和内野手(25)はこみあげてくる熱いものを必死で拭っていた。先輩たちに頭をなでられ、たたかれ、それでも、涙はとめどなくあふれてきた。
「すごくチームに迷惑をかけてしまっていたので…。自分がもっと、ちゃんとしていればというのが何回もありましたし…」
涙の理由は、劇的ドラマにつながった1本のヒットだった。9回、同点としてなお1死一、二塁で打席がめぐってきた。そこまで28打席連続無安打。重い、重い、打席だった。敬遠の西岡が一塁へ歩く前にわざわざ、戻ってきてくれた。
「思い切って、いくしかないぞ」
だれもが大和の苦しみを知っていた。22日のロッテ戦、6打数無安打に終わった後は、ホテルの食事会場で和田監督に笑いながら、尻を蹴られた。
「やり返せよ、という意味だと思います」
みんなの激励を胸に打席に向かった。追い込まれてからの4球目。低めの直球を思い切り、たたきつけた。高く弾んだ打球は遊撃内野安打。泥臭く、がむしゃらに壁を打ち破った。この1打で満塁。そして、サヨナラ打…。その瞬間、大和の涙腺は決壊した。
「(サヨナラの瞬間は)やばかったです。いつかヒットが出ると思っていたけど、なかなか出なくて…」
試合にすれば、わずか4試合のトンネルだった。ただ、今季、初めてレギュラーをつかんだ選手にとっては、どれほど長かったか。開幕からフルイニング出場を続ける疲労もあるはず。その中で結果を残すのが宿命だ。もがいて、もがいて、生まれた1本のヒット。大和がまた大きくなった。【鈴木忠平】



