<阪神3-2巨人>◇22日◇甲子園

 ミラクル弾でG連倒だ!

 延長12回にもつれ込んだ死闘は、阪神があとアウト1つでドローという状況から、福留孝介外野手(37)の右翼ポール直撃サヨナラ弾で、首位巨人に連勝した。巨人戦では球団史上初となる、延長12回のサヨナラアーチ。これで球宴を挟んで4連勝とし、巨人に1・5ゲーム差と詰め寄った。さあ、この勢いで3連倒に挑戦する。

 福留は静かになった浜風を肌で感じていた。延長12回2死、1ボールからの2球目、巨人マシソンの剛速球に狙いを定め、右翼スタンドに目標を置いた。バットを高く掲げると、そっと自分に課していた“ブレーキ”を解除した。

 「2アウトだと、開き直っていけた。初球、ボールになって気が楽になったしまっすぐ1本だった。届くと思ったけど、頼むから切れないでと思っていた」

 152キロを打ち砕いた白球はポールに激突した。あと1人で勝利という9回2死から守護神がまさかの同点被弾。首位巨人に連勝するチャンスが消えたかに思われたが、土壇場の一振りですべてを救った。

 「このゲームに負けなかったということの方が大きい。そこだけでしょう」

 プロ16年で初の屈辱が福留を変えた。6月10日、打撃不振から2軍に落ちた。故障以外では経験のないことだった。約2週間後、1軍に戻ってきた福留はコンパクトになったスイングで、逆方向を中心に打ち返した。

 「振れる方がいいんだけど…。今、自分ができることをやろうと」

 開幕直後、打撃の手本にしている前田智徳氏からもらった言葉がよみがえる。

 「昔の姿を追い求めるな。今、持っているものでやるしかないんだ」

 フルスイングを封印するのは苦渋の決断だったはず。だが、それは断じて“ストップ”ではない。あくまで今だけ必要な“ブレーキ”だった。それを最も必要とされる場面で解き放った。

 「風が強くなったり、弱くなったりしているのは知っていた。9回くらいから風が弱まっていたんで」

 開始直後、右翼への打球を押し戻していた浜風は試合が進むごとに弱まっていった。フルスイングを忘れなかった福留に、天が味方した。【鈴木忠平】

 ▼福留が延長12回2死からサヨナラ本塁打。福留のサヨナラ本塁打は中日時代の03年4月2日ヤクルト戦、阪神移籍後の13年4月19日ヤクルト戦に次いで3本目となり、3本とも引き分け目前の延長12回に記録。延長イニングに制限のなかった時代を含め、延長12回以降のサヨナラ本塁打を3本も打ったのはプロ野球史上初めてだ。また、阪神選手の延長12回以降のサヨナラ本塁打は13本目だが、これまで巨人戦は延長10回止まり。巨人戦で延長12回以降のサヨナラ本塁打は球団史上初めてになる。