<西武4-9オリックス>◇14日◇西武ドーム

 西武のゴールデンルーキー森友哉捕手(19)が、プロ初本塁打を放った。6点ビハインドとなった8回1死走者なしから炭谷の代打で登場。外角速球を左翼席に流す力と技の1発だった。わずか8打席目、完敗ムード漂う中でレオ党の度肝を抜いた。

 点差は関係なかった。森は自分の打席だけに集中していた。たとえどんな場面でも、まだリラックスして臨むことなど無理だ。敗色漂う場内に、「代打森」がコールされると大歓声が沸き起こった。それも力となる。榊原が投じたカウント2-2からの6球目。141キロ外角直球に逆らわずバットをぶつけるように振り抜くと、きれいな放物線を描いて打球はレオ党のいる左翼席に舞い落ちた。

 ルーキーとは思えない弾道でも、まだ高卒1年目だ。心底うれしそうな笑顔を見せた。「入るとは思いませんでした。7試合目は早すぎます。今は1打席しかないと思っているので、逆に集中できる。観客が多いのもそうです。追い込まれていたのでストライクだけ打つことを考えていました。逆方向?

 成長ですかね」とちゃめっ気たっぷりに言って笑った。

 森が新人離れしているのは、すべてのボールを打ちにいって見逃せること。それが積極性、ファーストストライクからでも、追い込まれてからでもフルスイングできる土台を作っている。「調子がいいときはファーストストライクから振っている。誰かに言われたわけじゃなく、自分で心掛けています」。

 その姿はベンチで見詰める宮地打撃コーチの目にもはっきりと映っていた。「ベンチで見ていてよく分かる。100%打ちにいって見逃すのは、なかなかできない。重心を低くためてタイミングを取っているから止まることができる。ファーストストライクから振れるのは勇気がいること。積極的だし技術もある」。ぎりぎりまで選球できるから打ちたい球だけスイングし、打てない球は見送れる。170センチ、82キロと小柄ながら下半身がドッシリとしているからできる技だ。上半身で振るタイプは振り出したら止められない。

 田辺監督代行も驚きを隠せなかった。「高卒のルーキーでここまでの対応力は見たことがない。大したもの。追い込まれて逆方向に打てるのは力がある証拠。スタメンで使いたいがリード面はまだまだだからね」。これからは好機でのチャンスも増えそうだ。まずは打撃でアピール。そして本業の捕手として、この日国内FA権をとった先輩炭谷に挑戦していく。【矢後洋一】

 ◆森友哉(もり・ともや)1995年(平7)8月8日、大阪府出身。大阪桐蔭では4季連続で甲子園に出場し、2年夏は藤浪(現阪神)とのバッテリーで春夏連覇。甲子園通算14試合で打率4割7分3厘、11打点。左打者として歴代最多の5本塁打を放った。2年時からU18W杯の高校日本代表。高校通算41本塁打。13年ドラフト1位で西武入り。イースタン・リーグでは67試合で打率3割4分1厘、5本塁打、41打点。50メートル走6秒2。遠投100メートル。右投げ左打ち。今季推定年俸1300万円。

 ▼森が代打でプロ初アーチ。高卒新人の本塁打は13年大谷(日本ハム=3本)以来で、西武では06年炭谷(3本)以来、8年ぶり。通算8打席目の1発は、高卒新人では03年10月4日に7打席目で打った吉村(横浜)以来のスピードだ。高卒新人の代打本塁打は13年7月14日大谷以来となり、西武では西鉄時代の54年8月15日仰木、67年7月30日柳田に次いで47年ぶり3人目。大谷の代打本塁打はプロ2号で、プロ1号が代打本塁打の高卒新人は90年6月29日林(ロッテ)以来、24年ぶり。