あんなに投げたのに…。阪神能見篤史投手(32)が21日、西宮市の球団事務所で契約交渉に臨んだが、サインしなかった。5000万円とみられた今季年俸は5500万円で、球団の提示額は推定1億円を超えたものの希望する倍増には届かなかった。

 マウンド上でのポーカーフェース同様、不満や怒りは胸にしまった。特有のサバサバした口調の中に、大黒柱として12勝を挙げた男のプライドを含ませた。「去年のけがの部分と、今年にかける僕の思いとがある。イニングも今まで一番投げたので、そのへんを評価してほしかった。評価しているとは言ってもらいましたが、多少開きがあります」。

 今季の200回1/3はチームトップで自己最多。昨季は8勝無敗でも、故障による約4カ月の離脱を理由に現状維持だった。「イニングが足りない」と明確に指摘され、その席で査定システムなどを細かく確認。1年間けがなく投げ抜き、大台も突破してみせただけに、違和感があった。

 巨人戦7試合で4勝1敗、チーム別最高の防御率2・30と相変わらずのGキラーぶり。開幕戦を含め、大事な試合を任される回数が多い。200回の重さが違う。年内決着にはこだわらず、納得のいくまで“抗銭”する姿勢だ。【柏原誠】