<全日本大学野球選手権:東京国際大1-0日体大>◇9日◇準々決勝◇神宮

 元広島の古葉竹識監督(75)率いる東京国際大(東京新大学)が日体大(首都大学)を破り、ベスト4に進出した。3連投の伊藤和雄投手(4年=坂戸西)が被安打8、7四球で再三のピンチを招きながら166球を投げて完封。1番に抜てきされた今井雄大外野手(3年=鎮西)が生還した初回の1点を守った。初出場の4強は第42回大会(93年)の青学大以来。愛知学院大(愛知)を4-1で下した慶大(東京6大学)の江藤省三監督(69)と、11日に元プロ同士で激突する。

 三塁側ベンチの古葉監督が突然、グラウンドに飛びだした。3回、三ゴロ併殺で無死満塁を2死二、三塁とした直後。次打者のカウント2ボール2ストライクだった。二塁を指さし、声を張り上げた。「走者がサインを盗んでいるんじゃないか」。鈴木隆球審が「厳しく見ていきます」と答えて、すぐ再開されたが、この絶妙な間が伊藤を助けた。

 次打者を1球で三振に仕留めピンチを切り抜けた。「苦しかった。監督はいいところでタイムをかけてくれるんです」と伊藤。満塁のピンチは3度を数えた。被安打8、四球は7。同監督は3回もマウンドに走った。9回1死一塁では「お前に任せた。バッテリーで決めた球を思い切って投げろ」のゲキ。2死満塁となったが、最後は140キロで三振に仕留めた。

 伊藤は初の3連投だった。埼玉・小川町の自宅から父親の車を借り、30分かけて「マイカー通学」するエース。帽子の裏には「魂」と書き込まれている。前夜、古葉監督から「お前しかいない」といわれ、期待に応えて力投した。「いっぱいいっぱいでした」。3日間で計348球。打線では今井が期待に応えた。2回戦までの7番から1番に抜てきされ3安打。1回にいきなり中前打して出塁し、この試合唯一のホームを踏んだ。「監督にはゴロを打てといわれて。(1番は)チャンスだと思って打席に入りました」。プロ出身監督の打つ手がピシャリはまっての1点差勝ちといえた。

 慶大とは3月29日に練習試合を行い、4-1で勝っている。「次は神宮で会いたいね」。試合後に江藤監督と交わした言葉が、11日に実現する。【米谷輝昭】