開設から123年にして大型旅客ターミナル「大さん橋」(神奈川県横浜市)で初めて釣りができる! 横浜の観光地のど真ん中の大桟橋で3月11日(土)、一般の釣り人100人を募集する釣りイベント「大さん橋フィッシング・チャレンジ!」が実施される。特にベテランでなくとも初心者やビギナーでも気軽に参加できることを目標としている。昨年10月と今年1月31日の試し釣りを取材した。

 あの大さん橋で釣りができる。

 堤防釣りファンだけではなく、船釣りの常連だって、釣りをしない観光客だって興味がありそうな響きだ。周囲を眺めると、マリンタワーに山下公園、動かない氷川丸。少し視線を横に流すと横浜ベイブリッジがきれいに見える。ランドマークタワーを中心としたみなとみらい地区がくっきりと見渡せて、赤レンガ倉庫の頭上には条件さえよければ富士山も拝める。

 横浜の人気観光スポットを眺めながらサオを出せる。素晴らしい。

 しかも、この大さん橋は、「鉄さん橋」という名称で産声をあげたのが123年前。以後、旅客専門桟橋としてしか利用されていなかったため、遊漁船やプレジャーボートが近づいて釣りはすることはあっても、内側の岸壁に釣り人が立って釣りをしたことはなかった。

 国の方針もあって、ここ数年旅客桟橋の有効利用が討議されていた。大さん橋では「釣り実行チーム」を結成して釣り経験のない観光客でも参加できる釣りイベントを企画、模索していた。

 そこで、市民市場「マルシェ」(誰でも入場可能)を同時開催する3月11日に史上初めて釣り場として一般開放する。大さん橋は、旅客専用なので、船が停泊しているときは釣りを含めたイベントは開催できない。イベントを組みやすい土日だと、今年度内では3月11日だけ停泊予定がなく「大さん橋フィッシング・チャレンジ!」を組み込んだ。100人を予定していて、大さん橋のHPから申し込みができる。

 その初イベントに先駆けて、試し釣りが2回、昨年10月31日と今年1月31日に実施された。1回目では、アジ、メジナ多数、スズキ、アイナメ、ウミタナゴ、ギンポ、ハゼ、ベラなど入れ食い状態でたくさん釣れた。傾向としては山下公園側と逆の赤レンガ側の底が砂地のエリアはアジの回遊が多く、先端の根の厳しいエリアではメジナが食いついてきた。

 ただし、2回目は潮温が11度と低くなってしまったことが影響したのか、20人ほどで4時間サオを出したが正式名称「アカオビシマハゼ」、俗称ダボハゼが6匹だけに終わった。2回目に参加した磯釣りのエキスパート鵜沢政則さんは「釣れないこともあるのが釣りなので、釣れる時期は選んだ方がいいかもしれない。ただ、とてもいい釣り場。ロケーションは最高ですね。それぞれに楽しみ方を見つけてほしい」とアドバイスを送った。

 2回とも参加した神奈川県水産技術センターで、東京湾などに放流する稚魚を育てている工藤孝浩さんは「魚の寄り付く環境としては最適ですね。大型客船は接岸するときに側面のスラスター(大型スクリュー)で海水をかき混ぜるので、岸壁よりは水がたびたび入れ替わってフレッシュなんですね。それと海側に450メートル伸びている。先端はもう沖釣りをしている船と同じ条件ですね」と絶賛した。

 3月11日。潮温は低いだろう。もしかするとボウズ(釣果ゼロ)もあるかもしれない。それでも大さん橋で釣りを楽しめるチャンスを手にできたら、わずかに3時間であるが思い切り横浜のど真ん中での釣りを堪能してもらいたい。タコボウズ記者も大さん橋で待っています。【寺沢卓】