リオデジャネイロ・パラリンピック陸上男子100メートル(車いすT54)に出場する“鉄人”こと、永尾嘉章(53=ANAORI A.C)が7度目の本番で進化を見せる。

 体脂肪8%。真っ黒に日焼けした肌に、筋骨隆々の鍛えられた上半身はまさに鉄人だ。「今までで一番メダルに近いと思う。13秒台が出ればメダルに絡めるし、出ないわけがない」と永尾は自信をのぞかせた。

 衰えを知らない。88年ソウル大会から08年北京大会まで6大会連続出場。49歳で迎えたロンドン大会は代表入りを逃し、一時は引退も考えた。「やりきった気がしない」。そう発奮し、リオ大会を目指すことを決意した。ソウル大会陸上スラローム金メダリストで妻の由美さんがコーチを務め、肩甲骨などの可動域を向上させる加圧トレーニングに取り組み、スタートダッシュを強化するために車輪のハンドリムの直径を1センチ小さくした。昨年6月には、自身の日本記録を15年ぶりに更新する14秒07をマーク。「年齢は関係なく、驚きもないし、満足もしていない。スタートラインに立てば一緒で、横にいる相手を倒すだけ」と淡々と言う。

 5歳でポリオ(小児まひ)を発症し、小学校から車いす生活を送っている。陸上は19歳で始めた。このままの好調を維持すれば、個人種目初のメダル獲得も見えてくる。「最近は、睡眠が浅く途中で起きてしまう。トイレではなく、興奮している証拠。これは調子の良い傾向です」。鉄人の7度目の正直に期待だ。【峯岸佑樹】

 ◆永尾嘉章(ながお・よしふみ)1963年(昭38)2月19日、兵庫県生まれ。5歳の時ポリオを発症し、両脚が不自由になる。90年に車いすバスケットボールの日本代表に選出。その後、陸上に専念。88年ソウル大会から08年北京大会まで6大会連続出場。04年アテネ大会では日本選手団の主将を務め、4×400メートルリレーで銅メダルを獲得。サザンオールスターズのファンで「君こそスターだ」のPVに出演。160センチ、52キロ。血液型B。