第1回 西ヘッドコーチインタビュー
シーズン前半のトラックレースが終了し、10月16日の箱根駅伝予選会に向け、これからが正念場となる本学。そこで、西弘美ヘッドコーチにこれまでのチーム状況とこれからの展望について語っていただいた。 ――トラックシーズンが終了しましたが、回顧をお願いします(主要大会の成績は下記表参照)。 東京六大学対校陸上競技大会、日体大記録会から始まって、関東インカレ、日本インカレと、自己ベストを出した子もいるけど、ひ弱な部分が出た子もいた。エースとして幸田(政経3)が自信と自覚を持ち、着実に力は付いてきた。だけど、まだまだ全体の選手層が薄い。関東インカレの3000m障害で吉岡(法2)が優勝したけど、肝心のハーフマラソンが不発に終わり、課題の残る前半の試合だった。 ――関東インカレや日本インカレは、箱根駅伝予選会に向けてどのような位置付けにされていますか? 大きな大会での度胸やレース勘(が鍛えられる)。記録会は好コンディションの中でペースも安定し、記録を出させるためのもの。大きな大会は流れを読んでレースを進めなければならない。その中で留学生や日本人上位の選手とどれだけ勝負ができるか。いろんな駆け引きもそう。それを体で覚えられたという意味で収穫もあった。 ――昨年は夏合宿の回数を増やしました。今年はこれからどのような予定でいますか? 8月に桧原湖(福島県)、北海道、9月末に菅平(長野県)。昨年より4日合宿は多くなる。今までは8月に集中して合宿して、9月末は記録会に出ていたけど、今年は合宿で調子のポイントを遅らせる。1万mのスピードも欠かせないから仕上げるのも必要だけど、今までは予選会に結び付かない選手が多かった。今年は記録会に出ないで、レースに出たい気持ちを10月16日の予選会の日まで持っていかせる。 ――合宿の内容はどうなりますか? ほとんど昨年と変わらない。だけど、インターバルを2回ぐらい多く持っていきたい。総走行距離は変えず、気持ちに余裕を持たせたい。物事の基本は不変である。しかし、基本的なことというのは簡単そうに見えて、それを体得することこそが難しい。普段の練習に増して集中し、その基本を合宿で徹底的に身に付ける。努力目標の確認、浸透を合宿の最大目標にしている。前半の桧原湖は脚力、後半の北海道はスピードとスタミナを重視したトレーニングになる。強化できるのは合宿しかないから、距離を踏んだときに壊れない体をいかにつくれるか(が重要)。 ――最近は朝の走り込みが増えたと聞きましたが。 関東インカレの後からかな。日中の暑さを避けて、涼しい時間帯に集中的に。疲労度が暑いのと涼しいのでは違うからね。(走り込みが増えた分)日本インカレでは80%の体調でどれだけ戦えるかだった。その中で幸田が自己ベストを出したのは大きい(日本インカレ1万mで29分02秒23の自己ベストを記録)。あとはこれから駅伝態勢に入っていこうってこと。 ――幸田がエースとして安定感を増してきました。どのような変化があったのでしょうか?また、主将にもなり幸田中心のチームになると思いますが、チームに与えた影響は? 幸田の力からすれば予選会で個人ベスト10に入らなければいけない。関東インカレ5000m6位入賞、全日本大学駅伝予選4組で日本人トップ等、トラックでは戦えるまでになった。春に実業団の旭化成の練習に参加して、自分で感じとってきたっていうのが大きい。(その影響が)チームにも浸透して、みんな意識は高くなってきてる。 ――2年生の成長も頼もしいですね。 岡本(政経2)、池邊(商2)、尾籠(おごもり・文2)、青田(文2)に加え、吉岡が20kmに積極的に取り組むことができれば。2年生全体的に見て、一人ひとりが目標を定めて意欲的にやっている点はプラスと言える。だけど、田中(法2)が1月にねんざをして戦列に入ってこれないのは、戦力が薄いウチにとっては大きな痛手。 ――今年でコーチに就任して3年目ですが、就任当初と比べ明大競走部の最も変わったところはどこでしょうか? 年々、選手一人ひとりの箱根駅伝に出たいという「願望」が「欲望」に変わってきた。それが行動に表れてきた部分が大きい。今までは行動が消極的だった。いろいろなレベルの部員がいる中で、強い弱いとは関係なく自分の最高のパフォーマンスを求めて、努力する自己管理能力をもつ集団の確立ができてきた。 ――最後に、本学競走部員に何を一番求めますか? 自主性だね。さらに、競技には「素質」が大きな因子となるが、それよりも仲間の存在、練習の雰囲気、何より本人のやる気、「向上心」、「気迫」、「精神力」が必要。これらをさらにウチの部員に求めたい。 ◆西弘美 にしひろみ 52歳 大学時代は日大で日本インカレ5000m、1万m、関東インカレ5000mに優勝。さらに、箱根駅伝1区当時区間新記録で区間賞、全日本大学駅伝4区区間賞と、輝かしい成績を残す。実業団でも久留米井筒屋所属時に全日本実業団駅伝1区当時区間新記録で区間賞を獲得。現役引退後は(株)スズキ陸上部監督を経て、日大コーチへ。そして、2001年7月に明大コーチに就任。昨年4月にヘッドコーチに昇格し、現在に至る。 【構成 本紙競走部担当・新井健一】