巨人やダイエー(現ソフトバンク)でプレーした伊藤博康氏(46)が今月、東日本国際大昌平(福島)の監督に就任した。学生野球資格回復制度が13年7月に改正施行後、福島県で元プロ野球選手が高校野球の監督に就任するのは初めて。伊藤監督は東北福祉大OBで阪神の金本知憲監督(47)、前楽天で今年引退した斎藤隆氏(45)らと同期生。自身も指名された91年ドラフト会議で一気に5人も選ばれた、東北福祉大黄金時代の中心選手として活躍した。

 元プロの手腕が、福島に新風を吹き込む。創部16年目となる東日本国際大昌平野球部は今夏の県選手権で8強も、09年夏の準優勝後は下降気味だ。マンネリ化打破と組織改革の期待を担う伊藤新監督は「ここで終わらず、次のステップにもいけるような人づくりから始めたい」と戦う集団になるための人材育成を第一に掲げた。

 福島・相馬市出身の伊藤新監督は学法石川から東北福祉大に進学。学法石川では柳沢泰典監督、東北福祉大では伊藤義博監督(ともに故人)と名将2人から指導を受けた。伊藤新監督は「(恩師たちの)いいところを取り入れたい。僕自身の経験も生かしてくれれば」と選手たちに期待する。

 輝かしいアマ実績を持つ。主将を務めた4年春の全日本大学選手権では、東北福祉大の全国初制覇に貢献。同期に阪神金本監督、元メジャーリーガーの斎藤隆氏ら豪華顔ぶれが並ぶ。元ダイエー作山和英氏(46=現ソフトバンクスカウト)とは中学から大学卒業まで同じ道を歩んだ。11年3月の東日本大震災発生時は、当時現役だった金本監督からいち早く電話をもらい、同年6月に楽天とのセ・パ交流戦に招待されるなど元気づけられた。5日に仙台市で行われた東北福祉大OB会に出席した際は金本監督らと再会。同期の「新監督」同士で親交を温めた。91年ドラフト4位で巨人に入団。2球団に6年間在籍し、現役引退後は整体師をしながら、野球教室などで小・中学生を指導してきた。

 就任直後の現在は、まだチーム状況を把握している段階だ。選手との対話を重視。整体師の経験も生かしながら子供たちの心と体のケアに努めている。何よりも仲間との絆を強調する。伊藤新監督は「常磐線から東北新幹線のレールに乗せてもらった。今度は僕が新幹線のレールに乗せてあげたい」とチームの起爆剤になる。【佐々木雄高】

 ◆伊藤博康(いとう・ひろやす)1969年(昭44)9月13日生まれ、福島県相馬市出身。学法石川-東北福祉大-巨人。学法石川では2年夏と翌春の甲子園に2季連続出場。東北福祉大で1年春からベンチ入り。全日本大学選手権は1年と3年時に準優勝。主将を務めた4年時に初優勝。秋の明治神宮大会3年連続4強。仙台6大学リーグでは4年春に打点と本塁打の打撃2冠でベストナイン外野手。91年ドラフト4位で巨人入団。ダイエーを経て97年シーズン後に現役引退。180センチ、85キロ。血液型A。

 ◆みちのく6人衆 91年の東北福祉大野球部には「みちのく6人衆」と呼ばれるドラフト候補がいた。写真はドラフト会議の2週間前の11月8日に東京の宿舎でくつろいでいる様子。前列右から金本知憲(広島4位=外野手)、浜名千広(ダイエー3位=内野手)、作山和英(ダイエー2位投手)、後列右から斎藤隆(横浜1位=投手)、伊藤博康(巨人4位=外野手)、撰伸治(本田技研=内野手)。そのうち5人がプロ入り。今年、金本が阪神の監督に就任し、斎藤は現役を引退するなど、大きな節目が重なる年でもあった。