<高校野球秋季北海道大会:駒大苫小牧7-0帯広三条>◇7日◇2回戦◇札幌麻生

 背番号は8でも、エースのプライドは忘れていなかった。今春のセンバツで完封勝利を挙げた駒大苫小牧の伊藤大海(2年)が、右肘の骨折後、79日ぶりの公式戦先発で6回2/3を散発2安打無失点。打っても公式戦初アーチを含む2安打3打点で、復帰マウンドに花を添えた。チームは帯広三条を下し、秋2連覇へ向けコールド発進。

 復活の77球に、仲間への感謝を込めた。右肘の疲労骨折が判明してから、2カ月あまり。79日ぶりの公式戦登板を終えた駒大苫小牧の先発、伊藤は「マウンドに立てたのは、みんなが全道に連れて来てくれたから」。今夏「1」だった背番号は「8」に。それでも、エースの誇りは変わらない。「背番号1ではないけど、投手陣やチームを引っ張っていくつもりでやっているので」と、秋2連覇を懸けた全道初戦のマウンドを、しっかりと守った。

 「ピンチでも、今日はしっかりと自分を保つことが出来た」と直球主体に打たせて取り、故障後、最長となる6回2/3を無失点。後を、同じく、この試合が復帰登板となった1年生の桑田大輔に託した。打っても、1回に先制につながる三塁打を放ち、5回には高校初本塁打となる2ランと大暴れ。直後の6回のマウンドでは、2四死球と長打で2死満塁のピンチを招き「(本塁打で)浮ついちゃったので、それではダメですね」と苦笑いで反省した。

 今春のセンバツ1回戦で、背番号15ながら、北海道勢としてはOB田中将大(ヤンキース)以来となる完封勝利をマークした。ところが、夏は南大会初戦から右肘の痛みに苦しみ、不完全燃焼のまま2回戦で札幌日大に敗退。疲労性の亀裂骨折と判明してから1カ月はノースローの日々を送り、徹底して下半身強化に努めた。リハビリ中だった秋の室蘭地区予選では、外野手登録。「みんなの『大海を、また投げさせるんだ』という言葉に助けられた」。軽いキャッチボールを再開した時には、うれしくてたまらなかった。

 「野球の楽しさをあらためて感じて、大会に臨めている」。再び選抜甲子園のマウンドへ。仲間との絆で逆境を越えた右腕の戦いは、これからが本番だ。【中島宙恵】