高々と舞い上がった打球を見つめる子どもたちは、満面の笑みだった。元ヤンキースの松井秀喜氏(40)がフルスイングで放った右翼席への1発。スタンドからの大歓声に包まれながら、ヤンキース時代の同僚、デレク・ジーター氏(40)と笑顔で抱き合った。「子どもたち、そしてジーターが素晴らしい日を過ごせたのであれば、それが僕にとって一番の幸せ。思い出深い1日になりました」。

 東京ドームで21日に開催された東日本大震災の被災児童を支援するチャリティーイベント。松井氏が岩手、宮城、福島の中学選抜、ジーター氏が日本在住の米国ジュニアユース選抜を率いて対戦したバッティングチャレンジの直後だった。松井氏はマイクを握り「僕が打ちます」と宣言し、打席に立った。当初は両氏のホームランダービーが予定されていたが「子どもたちを主役にしたい」と2人が申し出て、子どもたちが本塁打数を競うイベントに変更。スーパースターの打撃を見られないのか、と思っていた中での最高の演出だった。

 松井氏は「これ以上ないバッティングだったね。右翼席に最短距離で飛ばすという技術だけ」と笑ったが、現役時代をほうふつとさせるアーチは、子どもたちには最高のプレゼントになった。

 同い年でお互いを尊敬し合う2人だからこそ、実現したイベント。ジーター氏は「松井さんが大切な友人だけでなく、たくさんの子どもたちの役に立てるのであれば絶対にやろうという気持ちだった」と明かした。野球教室も、両氏が初めて監督を務めたベースボールマッチも、常に温かい目で見守り続けた。松井氏は「今日の1日大きなエネルギーになって、明日から大きな夢を持って頑張ってほしい」とエールを送った。夢への懸け橋となったキャプテンとゴジラ。最高の笑顔を子どもたちに届けた。【佐竹実】