父優作さん譲りの存在感で裕次郎新人賞に松田翔太/2008年12月4日付
日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞では、2年ぶりに石原裕次郎新人賞が選出された。松田翔太(23)は主演作「イキガミ」などで裕次郎さんをほうふつさせるスケール感と豊かな将来性を発揮した。
石原裕次郎新人賞の受賞をドラマ収録中のスタジオで聞いた翔太は「びっくりです」と喜んだ。23歳での栄冠。「裕次郎さんは映画界の歴史の中で常に新しいことに挑戦していたパイオニア。遠い存在すぎて…。どうして僕がそのような賞をいただけるのか、不思議な感じがします」と笑顔で話した。
主演作「イキガミ」での演技が光った。24時間後の死を宣告するエリート公務員・藤本賢吾役。職務に忠実でありながら、理不尽な若者たちの死に疑問を抱いていく。「暗いシーンが多かったので、あえて自分の気分を悪くすることも役作りの1つでした。大変だったけど、経験値はすごく上がりましたね」。無表情の中に、感情の揺れ動きを見事に表現した。
撮影はハードを極めた。「花より男子ファイナル」の撮了翌日にクランクイン。当日は、午前中に髪を切って臨んだという。「切り替えはすぐにできました。役者ですから、やるしかないですし」。181センチの長身に、父で俳優の松田優作さん譲りのシャープな顔立ちは、スクリーンでも存在感にあふれた。選考会でも「大物になりそう」「裕次郎さんを感じさせるキャラクターがある」「昨年の『ワルボロ』に続く好演だった」など、将来性を高く評価された。
裕次郎さんは、優作さんの才能に早くから注目した人物でもあった。出世作のドラマ「太陽にほえろ!」でジーパン刑事として走る姿、そして壮絶な殉職シーンは世紀を超え今も語り継がれる。翔太もドラマは、見たことがあるという。
映画に対する思いは強い。「海外でもっともっと評価される日本映画を見たいと思うし、その中に自分がいれればうれしいですね」。裕次郎新人賞は通過点。無限の可能性を秘めた23歳の目は、常に前を向いている。
[2008年12月4日付]