9月15日のセントライト記念で起こった発走時のアクシデントに関して、JRAには当日から3日間で90件の抗議や問い合わせが寄せられた。あらためて事実関係を検証する。
スタート直前、9番ゲートのファイアンクランツ(3番人気)がゲートに突進。腰を落としてもがき、ほどなく危険防止のために外枠発走となった。レースは向正面で3番手に押し上げたものの、直線失速して最下位でゴール。レースを終えた後に鼻から出血している画像がSNSで拡散されたことも加わり、果たして出走させるべきだったか疑義が生じた。
モレイラ騎手は「パドックに返し馬と、レース前からテンションが高ぶっていた。スタート前にゲートに頭をぶつけてしまい、走りのフォームに影響があった」とコメント。アクシデントが敗因と全く無関係とは言えなかった。
JRA審判部に当時の状況について尋ねると、以下の事実が確認された。
ゲートからいったん後ろへ出した後に、獣医師が疾病がないか馬体検査を行った。発走前の時点では鼻からの出血が認められず、発走委員が出走可能と判断した上で外枠発走とした。
馬体検査は行われていた。確かに通常の手続きを踏んだ上でレースは発走した。馬体故障や出血が認められなかった以上、妥当な判断だったのかもしれない。鼻からの出血は発走後と推定される。
一方で、精神状態が激しく乱れてゲートに顔面をぶつけた馬に対して、馬体の確認作業に十分な時間が取られたとは言い難い。いったん全馬をゲートから出して馬体検査を行う必要はなかったか。モレイラ騎手とスターターの間で意思疎通は取れていたか。重賞の人気馬だから馬券や売り上げに与える影響は大きい。ある調教師からは「あれだけ暴れていれば、調教師としては除外にしてほしい」という意見も聞かれた。
馬がゲートに突進してから発走まで約1分15秒と多くの時間はかけられなかった。よもや人気馬除外による売り上げ減や、地上波テレビの放送時間(発走予定は15時45分)を考慮したわけではないだろうが、うがった見方をされても仕方ない。
競走除外ならファイアンクランツ絡みの馬券を買っていたファンの多くが救済された。馬も余計なダメージを負わずに済んだ。後に出血は鼻腔(びくう)の外傷と判明。ゲート前扉への突進は決して珍しくない。レースを商品として売る以上、その質を担保するためにより慎重な対応が求められる。【岡山俊明】